人類はなぜ肉食をやめられないのか 250万年の愛と妄想のはてに / マルタ・ザラスカ(インターシフト)肉食による地球環境破壊   食肉の世界がもつ奥深さを認識させる|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
2017年8月14日

肉食による地球環境破壊  
食肉の世界がもつ奥深さを認識させる

人類はなぜ肉食をやめられないのか 250万年の愛と妄想のはてに
著 者:マルタ・ザラスカ
出版社:インターシフト
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母親がベジタリアンを目指しながら挫折するところから、本書は始まる。なぜ人間は肉食を断てないのか。肉には何かがある。その素朴な疑問を解こうと取材・調査・論考を進めていくと、人類の歴史から、食文化、産業・政治などありとあらゆる問題に直面していくことになる。その結果、さまざまな分野に論考は広がっていく。

なぜ人類は肉を食べるようになったのか。その歴史をたどっていくと、むしろ肉が人間を作ってきたということが分かっていく。なぜ人間は肉を食べたがるのか。栄養学的に考察を進めていくと、肉をたくさん食べると女児は初潮が早まり、多くの子どもを作ることができるという事実にぶつかる。

人間が肉を食べたがるのは、うまみが豊富で脂肪が多く、焼いた時の芳香が魅力的だからだが、それだけではない。食肉業者が消費者を肉のとりこにさせ続けるさまざまな手法が紹介されていく。味を大きく左右させるものとしてストレスの役割が大きいと指摘、屠畜や動物福祉に言及していく。また肉食業者が生産量を上げ、コストダウンを図るために家畜を薬漬けにし、増量を図る方法が紹介され、政治力を発揮して政府を動かし、補助金を出させてきたことが述べられている。

食肉業界の圧力を受け、日米貿易摩擦ではいつも牛肉が第一番目に登場してきた。日本の食卓が西洋風に大きく転換してきたのは、米国の食肉産業の圧力といっても過言ではないほどだ。政治力が業界をさらに強化し、いまや米国の肉の生産販売額は、ハンガリーやウクライナのGDPを上回るというから驚きである。

現在の世界の状況に目をやると、インドや中国を中心にアジアでの肉食の拡大が地球規模での食料・環境問題で大きな脅威になりつつあることが指摘されている。ブラジルの熱帯雨林の伐採が加速し大豆畑に置き変わりつつあるが、その大豆の80%以上が中国に飼料用として輸出されている。地球の人がすべてアメリカ風の食事を行うと、いまの地球の耕地の1・5倍の耕地を必要とすると述べ、警鐘を鳴らしている。

この地球の危機をどう克服していったらよいのか。著者は最後に提言を行っている。(1)とにかく無駄にする量を減らす。(2)栄養転換ステージを4から5にする。栄養転換ステージ4は肉食が広がり疾患も増えた社会で、5は肉を減らす新たな段階のことである。(3)少しでも肉食を減らすために、いきなりベジタリアンにならなくても食習慣を変える程度の穏健な変革をよしとする、の3点である。特に強調しているのが、栄養転換ステージ5への転換である。地球環境破壊での肉食が果たす役割の大きさと、日頃、何げなく食べている食肉の世界がもつ奥深さを認識させてくれる本である。(小野木明恵訳)

この記事の中でご紹介した本
人類はなぜ肉食をやめられないのか  250万年の愛と妄想のはてに/インターシフト
人類はなぜ肉食をやめられないのか 250万年の愛と妄想のはてに
著 者:マルタ・ザラスカ
出版社:インターシフト
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年8月11日 新聞掲載(第3202号)
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