連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(20)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年8月22日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(20)

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監督作品『乙女と死』(1972年)の撮影現場
JD
 『カイエ』で活動していた私たちは、誰一人としてドキュメンタリーを撮りたいとは思いませんでしたし、助監督にもなりたくなかった。ジャック・リヴェットを除いて(笑)。リヴェットはいつもスノッブでしたからね。ルノワールの助監督になることを選びました。『カイエ』の若い批評家たちにとっては、簡単なことです。しかし、トリュフォーは助監督をしていないし、ゴダールもやっていない。シャブロルもロメールも同様です。
HK
 トリュフォーはロッセリーニの助監督をしていたのではないですか。
JD
 彼は助監督のようなことはしていません。確かにロッセリーニの撮影現場に出入りしていましたが、助監督として仕事をしたことはありません。彼の仕事は、ロッセリーニがパリに来た際の連絡係でした。ホテルや色々な人とのコンタクトをしていただけです。それでも助監督や秘書のように仕事をこなしていたわけではありません。友人というか熱狂的なファンですね。
HK
 少し脱線しましたが、先ほどの話に戻りましょう。映画の前半世紀を見ていると、非常に多くの可能性に満ち溢れていたと思います。例えば、リュミエール兄弟の『カード遊び』の背後には、セザンヌの『カード遊びをする人々』が見えますし、他の映像に関しても同様です。つまり、他の芸術が何世紀にも渡って培って来たことが、一緒くたに映像を通じて表れてしまっているような気がします。
JD
 確かにそのような面もありますが、そんなことよりも重要なことが映画にはあります。他の芸術にはない恐るべきことです。人類の歴史の中で、つまりメーデーが発端となった短い歴史の中で、初めて「生」を見ることができたのです。「生la vie」とは、私の表現です。だから、このことについて、私はよくわかっているはずです。ここで言う「生」とは、「生命」「人生」「生活」のような意味をひっくるめたものです。映画のおかげで、私たちは「生」が生き生きと動き回るのを見ることができたのです。他の芸術では、「生」とはあくまでも想像に委ねられています。絵画という芸術においては、画家は何らかの「生」を表現しようとします。日本の画家であれ、中国の画家であれ、西洋の画家であれ同じことです。音楽でも同様です。その一方で映画において、あなたは「生」を見ることができます。要するに「生」は目の前に存在するのです。このことは未だによく理解されていません。映画とは「生」から始まる芸術であり、百年後に誰かが見たとしても、同じ「生」がそのままに存在する芸術なのです。

リュミエールの映画を例にとりましょう。あなたが見る人々、つまりスクリーンの上を動き回る人々は、皆死人です。つまり映画とは、現実では死んではいても、スクリーンの上で生き続ける亡霊たちを見せることを課された唯一の芸術なのです。映画が生まれる以前には、誰もこんなものは見たことがなかった。だからこそ、このことは観念的なところで、根本的な意味を持っています。実際にこの「生」という観念が全てを変えてしまった。例えばあなたがリュミエールの初期の作品を見ると、「見る」ということに唖然とさせられるのではないでしょうか。そこには写真があるのですが、動く写真なのです。カメラが動くことはまだなく固定画面のままです。確かにフレーミングをしなければなりません。しかし、のちの映画作家によって映画の劇作法の一部となるようなかたちでの、フレーミングの観念はまだ生まれていません。ただ単純に目の前に存在しているものを記録し、そこで「生」が与えられていたのです。言い換えると、生きている場所を映すこと。ある場所に出向き、その広場のような場所全体をフレームの中に収め、人々がそして煙や馬車のような様々なものが、色々な場所へと動き回るのを撮影する。ここに映されている全てのもの、これが「生」です。そして私たちはこの「生」を見つめる。リュミエール兄弟によってもたらされた重要なこと、それは「生」を見つめるという単純なあり方です。

<次号へつづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕

2017年8月18日 新聞掲載(第3203号)
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