日本の夜の公共圏 / 谷口 功一(日本の夜の公共圏)スナックは学び舎である  経験、研究すればするほど奥深さを知る|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
2017年8月21日

スナックは学び舎である 
経験、研究すればするほど奥深さを知る

日本の夜の公共圏
著 者:谷口 功一
編 集:スナック研究会
出版社:日本の夜の公共圏
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「いいかい、酒の席では政治と宗教と野球の話はご法度だよぅ~」10代の頃に、新宿でスナックをやっていた母から言われつづけた言葉です。当時は何の意味もわからなかったのですが、最近では、齢と杯を重ねて来て、あの頃母の言葉の意味が理解できるようになり、一丁前に「オレはスナックを完全に理解したなぁ…」なんて感慨に浸っていた頃に、本書の登場。「なんだよ、オレってスナックを完全に理解してなかったんだ!」と自分の無知に顔を赤らめ、貪るように本書を読みました。冒頭の母の訓示は、堅苦しい話、ややこしい話、熱くなる話などのご法度であくまでも店側と客側のパワーバランスを均等に保ち、みんな楽しく一夜をシャンシャンで〆る為の訓示であり、それまで一般的に語られてきた店側と客側との「たかがスナック、されどスナック」論の中の一部の金言でした。しかし本書は膨大なデータや文献を駆使し、さらに第一線の研究者が「たかがスナック」を真面目に学術的研究という、これまでのスナックに無かった新しい割り方でスナックを飲み干し、研究会の先生方の内臓で濾され発表された「たかがスナック、されどスナック」論をさらなる高みに上げてくれた奇跡の一杯(一冊)です。

これまで、実家がスナックだったので、スナックが好きになり、で、水商売界のど真ん中の王道を歩んでいたスナックが、いつしか、水商売界の端を歩く羽目になってしまった現状を憂いてました。ならば『自分を育ててくれたスナックに恩返しをしたい』という一念から、スナックに通い、スナックの番組を立ち上げ、スナック本の出版、雑誌などの取材で「世の中はスナックブーム到来!」などと煽り続けてきました。そんな勝手に自分が引っ張ってきた自負から、世間がスナックの魅力に気がついてくれただろうと、ふと「だるまさんがころんだ」気分で自分のうしろを振り返ってみると、後ろには誰も付いてきてくれなかった時の寂寥感は凄まじいものでした。これは失われつつあるジャンルを引っ張っていく自分に課せられたオプションなのか? しかし、現在、振り向いたら強力な味方の「日本の夜の公共圏」スナック研究会がいてくれたのです。立派な先生たちが発表する研究発表は無学な自分には読むのが大変でしたが、一般社団法人全日本スナック連盟会長としてこれまでスナックの啓蒙活動で発した言葉「スナックは学び舎である」もまんざらの与太話でなかったんだと、今後の啓蒙活動を続けていく支えになりました。2017年2月に実際にスナックをオープンしてみた自分は「行政から見たスナック」もオープンさせる過程で通過してきた困難…とまではいきませんが、ただ届け出って面倒くせぇなぁっという感想です。客として通っていたスナックと経営する側に回ったスナックの両面を経験する事になり、経営側に廻って嫌な気分の時にもニコニコと接客しなければならない場面に出くわす時など『ああ、ママにも絶対こんな気分の日もあるにも関わらず、オレに嫌な顔ひとつもしないで接してくれてたんだ…ママありがとう』と余計にスナックのママたちをリスペクトする気持ちが芽生えました。どうやって一夜を楽しく過ごすべく客側の所作と、どうやってお客様をもてなすべきなのかという店側(お酒の原価を知り驚愕したり)の双方を経験できたのも、これからスナックを世間に広める知恵となりました。経験すればするほど、研究すればするほどスナックの奥の深さを知ります。本書のスナック研究会と、私達の全日本スナック連盟が、これからもスナックを深く掘り下げ、掘り起こし、のエンヤ~コラ~の活動をする事が、これまで興味がなかった人たちが感じていて開くことができなかったスナックの「重い扉」を少しでも「軽い扉」に変える尊い行為なのです。って原稿はココまででいいや、さぁ、これからスナック飲みに行っちゃおうっと。今夜はどの店にしよっかなぁ…

★すなっくけんきゅうかい=サントリー文化財団から二〇一五年度の研究助成を受けて発足。研究題目は「日本の夜の公共圏――郊外化と人口縮減の中の社交のゆくえ」。会HPはhttp://snaken.jp

この記事の中でご紹介した本
日本の夜の公共圏/日本の夜の公共圏
日本の夜の公共圏
著 者:谷口 功一
編 集:スナック研究会
出版社:日本の夜の公共圏
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年8月18日 新聞掲載(第3203号)
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