【横尾 忠則】おでん様の「秘密の花園」 自己確認の夢とタイガース 起こされる夢、夢の救済|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年8月29日

おでん様の「秘密の花園」 自己確認の夢とタイガース 起こされる夢、夢の救済

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2017.8.14
 夜中にご帰宅されて、また早朝お出かけされるおでん様は一体何者ぞ。

アトリエでゴソゴソしながら日野原重明先生の本を読む。どの本も死を前提にした生きるための、うんとわかりやすい言葉でうんと深い内容の現代養生訓。

2017.8.15
 昨夜8時過ぎにご帰宅されたおでん様は珍しくご在宅された模様。

J―WAVEラジオインタビューは森ビルの32階。雨で霞んだ都心は現代の朦朧派ってとこ。インタビュアーの声はヘッドフォンで聴けたので理解できた。話の内容は近著『本を読むのが苦手な僕はこんなふうに本を読んできた』についてのPR談義。

十和田市現代美術館の入場者数が2万人に迫ったという通知あり。

2017.8.16
 ぼくは現在、高校三年生になったばかりだが、果たしてあと一年学校に行く意味があるのだろうか。将来役にもたたない授業や試験を受ける時間を絵の時間に当てるべきだ。中退を決心したところで覚醒。

かなり忠実に名画を模写しているが、模写だからといって何も忠実にそっくり描く必要はない。もっと自由に手本から離れて大胆に描くべきだ。そして短期間に大量に。するとそこから次の段階に何をすべきかが見えてくるはずだ、と自己確認したところで夢とわかる。

3つ目の夢は阪神タイガースに雇われたらしい。会長らしき人も来ている。それにしてもぼくはタイガースで一体何をするのだろう。

おでんは昨日は終日雨で家にいたが、雨が止んだ途端早朝から姿を消して、また「秘密の花園」に戻っていったらしい。

東京ステーションギャラリーの「不染鉄」展を妻と美美と徳永で観に行く。初めて聞く名の日本画家だが、スケールの大きい風景画で、どこか牧歌的だが不思議な神秘を漂わせている。様々な様式を連想させるので、その源流を辿るのも興味つきない。

帰宅したら珍しく在宅のおでん。
山田詠美さんと(撮影・岩本文枝)

2017.8.17
 ホテルで寝ていたら夜中にメイドさんが布団を持って入ってきたので驚く。こちらも驚かしてやろうと思って化物のような奇声を上げると、大声で叫びながら飛び出していった。そのまま目が醒めてしまったが、眠っているところを起こされる夢なんて初めて見た。

おでんが玄関の外にいたので、そーっとおでんの様子を眺めているとこちらの目を盗んで、アプローチから公道に出て隣家の垣根の中に飛び込んだ。どうやらおでんの「秘密の花園」はここだったのだ。

昼は山田詠美さんと渋谷のうなぎ屋で会う。どうしてこうなったのかは今は内緒。この店のうな重は三枚重ねの豪華版。山田さんが全部食べられなかったのは子供の頃浜松におられたせいだろうか。

あとでわかったが、おでんは昨夜の内にぼくのベッドで二度目の放尿をしていた。ひとのベッドにオシッコをするために帰って来たのか。何をか言わん。

2017.8.18
 深夜テレビでボブ・ディランの特集を観る。ニール・ヤング、エリック・クラプトン、ジョージ・ハリスンの豪華ゲストと同じステージに立つディランが一段と輝いて見えるのは、きっとノーベル賞のせいだろう。

ぞうがめが脱出する時代だからおでんが脱出してもそう珍しくない。

西脇市岡之山美術館の好岡館長と山崎学芸員が来訪。来年予定されている郷里をテーマにした個展の打合せ。歯抜けの山崎さんの歯が見事に二列に並んだ。「ニカッ!☆☆☆」

2017.8.19
 昨夜10時に帰ってきたおでんは早朝4時頃に出掛ける。

宮崎駿原作、脚本、監督の「崖の上のポニョ」の文庫本にエッセイを頼まれていて、DVDを観るが難聴のためセリフが聴きとれなく、コミック版(四部作)を読む。感動的なシーンが、2つ、3つある。海の迫力のある描写をアニメで表現する難しさに挑戦。その描写にこちらもエッセイで挑戦。

夕方、突然の雷雨。8時頃、少し濡れておでん帰還。

2017.8.20
 昨日の嵐の猛威が庭の樹の枝と落葉を散乱。

山田洋次さんの2日前の夢。中国地方のロケ地で、ふと撮影中の映画に自信喪失。撮影途上で降りたい衝動にかられるが、会社とのトラブルは必至。あゝ、困った。寅さん時代のカメラマンに相談する。その内、この状況自体夢ではないかとふと思い始め、スタッフ達に「きっとこれは夢だ!」と叫ぶ。夢だとわかった途端に至福の感情に襲われる。夢の中で夢だと認識する入れ子構造夢である。悪夢ほど覚醒した時の至福感は大きい。夢の救済である。

眼鏡店インスパイラルへ。山田さんは読書用の眼鏡を作りに、ぼくは読書用の眼鏡が出来たので取りに。

日野原重明先生の本を2冊買う。計9冊になった。
2017年8月25日 新聞掲載(第3204号)
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