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八重山暮らし
2017年8月29日

八重山暮らし➆

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小浜島の旧盆。国の重要無形民俗文化財に指定されている貴重な祭祀だ。
(撮影=大森一也)
「時期が来たら、笛の音でわかるさぁ…」

小浜島で生まれ育った年かさのおんなの瞳が仄かに彷徨う。我が島へのゆるぎなき誇りが、その口の端からこぼれ落ちる。

旧盆行事を控えた小浜では、細く高い野鳥のさえずりを思わせる笛の音が、そこかしこから流れてくるという。かそけき笛の音が流麗な旋律を奏でるようになる頃、少年の調べが先祖供養にしとやかな風情を添えるのだった。

三日三晩、集落に楽の音の絶えることはない。母や祖母の手織りの着物を着けたニムチャーニンズ(念仏衆)は家々を巡り歩く。笛に三線(さんしん)、太鼓、それに男らの野太い念仏歌謡の声が加わり、夜空を満たす。とりわけ若者たちの笛の音、彼らの立ち振る舞いのすべてが忘れがたい光景として心に記される。

島に自生する節と節の間が長い竹を選りすぐり作られた横笛。簡素な楽器を幼い頃より手にしてきた少年たち。おとなに交じり堂々と奏者を務める兄に追いつけとばかり、稽古に精を出す。だからであろう、小浜には笛の名手が育つ。
「笛には楽譜がないから…耳で聞いて、身体に染み込ませて覚えるしかない…」

豊かな音色を賛美された青年は、はにかみながら顎を引いた。

島に伝わる古典芸能への道明かりが、ここには細ることなく未来へと続いている。

2017年8月25日 新聞掲載(第3204号)
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