『国語・国文学図書総目録』のリニューアルを機に 「国語・国文学」から「文学・ことば」へ 国語・国文学図書総目録刊行会会長・白石タイ×㈱読書人代表取締役社長・黒木重昭|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 特集
2017年8月31日

『国語・国文学図書総目録』のリニューアルを機に
「国語・国文学」から「文学・ことば」へ
国語・国文学図書総目録刊行会会長・白石タイ×㈱読書人代表取締役社長・黒木重昭

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2018年版表紙デザイン(仮)
現在入手できる国語・国文学の一般書・専門書を掲載した『国語・国文学図書総目録』が、年末刊行予定の2018年版から『文学・ことば図書総目録』とタイトルも変え大幅にリニューアルされることとなった。
国文学のみならず世界の文学も取り扱っていくことで、研究者などはより横断的に関連書を検索でき、一般読者も「コミュニケーション」などのキーワードが取り入れられたことで、実生活で役に立つ実用的な書籍を探すことが可能となった。
より一層利用価値が増すこの目録について、目録を刊行する「国語・国文学出版会」の会長白石タイ氏(塙書房代表取締役社長)―目録広報委員長の吉田智恵氏(三弥井書店)も同席―と弊社代表取締役社長黒木重昭の二人に対談してもらった。 (編集部)

世界の文学を対象にぐっと幅を広げる

黒木
 国語・国文学図書総目録刊行会から刊行されている『国語・国文学図書総目録』が、2018年版からタイトルが変わるとのことですが、もともと白石会長は「国語・国文学」という言葉にこだわっていらしたと伺いました。その会長があえて今回『文学・ことば図書総目録』に変えようと決めたのはなぜでしょう。
白石 タイ氏
白石
 たとえば、国語学会という学会が日本語学会に名称を変更しているんです。学会の中でも賛否両論はあったらしいのですが、そのようなこともあって、以前から目録の名称も変更しようという意見もありました。そして、もともと日本語自体が大陸から来た文化ですので、日本の中だけで考えているといろいろな矛盾が起きてきます。学問もいろんな接点が求められる時代になってきて、歴史だとか民俗学だとか異なる分野と絡んだ学問も盛んになっていますし、日本を考える時に世界とのつながりで考えないと今の学問はまずままならないだろうと思います。この目録にも今までも中国の文学などを入れようと思っていた方もいらしたのですが、これまでは「国語・国文学」ですから世界の文学といった項目がなかったこともあって仕方なく漢文の項目などに無理やり入れたりしたこともありました。時代の流れというとおかしいですが、今回、タイトルを変えるこの機会に『文学・ことば図書総目録』に相応しい「世界の文学」も対象になったわけです。タイトル変更には、掲載書目も読者もぐっと幅を広げていきたいという思いがあるんですね。それによって今まで自分には関係ないと思われていた方たちも、関係あるかなと思っていただければいいなと。
黒木
 一番大きく変わるのは目録タイトルですか。
白石
 もちろん内容もかなり変わります。先ほど申しましたように世界の文学も入れますが、「コミュニケーション」といったような項目もあります。日本文学に関しても今までは対象外だった部分もありまして。と言いますのも、近現代となると啄木は入れるけど村上春樹は対象なのかと私たちも非常に悩んでいたんですね。それが今回のリニューアルでそうした作品も入れることになりましたので、この点でも読者のみなさんにはかなりのアピールになるのではないかと思っています。またタイトルに「ことば」と入れることによってジャンルの中に「コミュニケーション」を入れているんです。それは今の時代に合った目録にリニューアルする意味を検討した結果ともいえます。例えば今の学生が就職活動をする時に、コミュニケーションの仕方がわからないとか、あるいは社会人になってビジネス文書の書き方がわからないといったことに対応する書目も、目録の中に入れ込んでいきたいと思っているんです。
黒木
 2017年版の総目録の「発刊のことば」を見ると、「106社の1400点」となっていますが、そうなるとリニューアルによって出版社数も書籍点数もぐんと増えるのですか。
白石
 もちろん増えると思います。新規に掲載を依頼する社は500社以上にはなるのではないでしょうか。
黒木
 いろいろと新しい試みをしているわけですから、出版社もぜひ期待をして掲載してほしいですね。
白石
 ぜひお願いしたいです。原稿は10月中旬まで間に合いますのでぜひ掲載を検討してもらいたいです。他にも総目録の巻末には「文学館資料館めぐり」というものを2017年版から入れたのですが結構反響があって、掲載された文学館などに実際に訪ねている方もいらっしゃるようです。今までとは違う目録の使い方ですね。一風変わったガイドブックとしての目録を旅行の際に手軽に持って歩いていただいても参考になるのではないでしょうか。我々、国語・国文学総目録刊行会の会員たちも訪問して目録についてヒアリングしたりしています。今回のリニューアルは、読者の方により使ってもらえる目録にすることを第一に考えて今まで顔が見えていなかった目録から顔が見える目録へと変わっていけたらと思っているんです。
今すぐ役立つものからずっと持ちたいものまで

黒木
 近頃は経済やテクノロジー優先で考えられがちですが、その根底にあるのは本当は人間としての哲学とか思想のようなものじゃないですか。それがなくていきなり技術だけでは人間性が損なわれてしまうのではないでしょうか。この間、ある高等学校の校長先生が定年後自分の人生を振り返ってまとめた本を読んだのですが、その中で教え子の一人が大学を卒業してロンドンに留学したら、ロンドンの学生たちが日本の文化や文学、美術といったことについて聞いてくるのに、それが自分にまったく身についていなかったことを知って愕然として、やはり日本のことを学ばなくてはいけないと言っていたと書いてあったんですね。世界とコミュニケーションをしようとすると、自分の住んでいる国や地域の文化とか、哲学思想も含めてそういうものを十分吸収していないと本当の海外との交流は出来ないですよね。その中の最たるものが文学じゃないですか。そういうことを出版界の私たちも、こうした目録を出す人たちももうちょっと考えないといけませんね。
吉田 智恵氏
吉田
 小社は世界と日本を比較するような本が結構多いので、今回日本の文学だけでなく世界の文学、そして文学に限らずに目録に入れることで、比較によってそれぞれがクローズアップされてくる部分があると思うんです。世界を見ることで日本もクローズアップされるし、日本から世界がクローズアップされることもある。その相乗効果が出てくるようになるのかなという期待をしています。
白石
 日本には『源氏物語』という最古の小説もあるわけですから、そこからすると本当に豊かな文化で厚みも深みもあると思いがちですけれども、今の時代は目先のメリットを先に考えてしまってついつい文学などはおざなりになってしまっていますね。これはある意味マルバツ社会の教育のマイナスの部分なのかなと思ったりもしますが、ただ最近は少しずつそういうことに気が付いて来る人たちも出てきているんじゃないかなという感じはします。ですから先程もちょっと触れましたがコミュニケーションについてやビジネス文書に関しての書目から『源氏物語』まで載っているというような逆の提示の仕方もあるんじゃないかなと思うんです。今すぐ役に立つ目の前で必要なものから、ずっと持っていられて知識が溜まっていったらいいなというものまで載っているのがこの『文学・ことば図書総目録』だとアピールしていくのもいいかもしれませんね。
黒木
 実はちょうど去年の今頃、全国の大学図書館から300校を選んでアンケートをしたんですね。回答では司書の方は「読書人」を結構読んでくださっているのですが、学生は読んでいますかという質問にはあんまり見ていないというのが多くて、それはちょっとがっかりしました。ではそれを司書の方が促進してくれるかというと、そこまで手は回らないんですよね。それで今、手を変え品を変えて、大学図書館で学生に「週刊読書人」を読んでもらうための仕掛けをしているところなんです。そのスタートが今年の四月からはじめた「書評キャンパス 大学生がススメる本」という紙面のコーナーで、これは学生が自分が読んだ本を1200字で書評するものなんですね。最初のイメージは学生が自主的に気づいて書いてくれるかなと思っていたのですが、やはりそれでは駄目だなと思って、大学図書館の司書の方々に、お宅でもやっておられるだろう読書教育の中で、すごく熱心な学生に「読書人」に書かせてみませんかと聞いてみたら、皆さん食いついてきてぜひ書かせますと言っていただけました。
白石
 それは面白いですね。
黒木
 その書評を紙面に掲載すると、学生自身がSNSなどで「読書人」に載ったよと言うわけです。そうするとそれを見た学生たちが図書館で「読書人」を読んで、じゃあ私もその本を読んでみようとなったりして読書の推進にもなる。そうして徐々に大学生に本を読ませて、合わせて「読書人」も読んでもらおうと考えているんです。当然そこで司書の方と学生との交流も出来るでしょう。もちろん本紙で掲載出来なかった人の書評も、読書人のウェブ上には本紙に掲載されたものとあわせてすべて掲載する方針ですので、自分が書いた原稿がどこにも載らないということはありません。でもやっぱり紙面に載ったほうがかっこいいんですよ。
白石
 いい企画だと思います。
紙媒体のメリットとウェブ媒体のメリット

黒木 重昭
黒木
 でも、主に大学生が読むのはどちらかと言うとちょっと柔らかめなものや文庫だったりなんですね。私どもはもうちょっとハードなものも読んでくれないかなとも思うんです。それでこの目録にも繋がってくると思うのですが、この『文学・ことば図書総目録』を学生に知ってもらうことで、目録の中から本を選んでみようかなとなればいいなという期待もあります。そのようなかたちで「読書人」の記事とこの総目録のコラボが出来るといいかなとも思っているんです。
吉田
 紙媒体のいいところは、たとえば『源氏物語』一つとってもいろんな『源氏物語』を取り上げて、それを上から下までずっと目で追っていくことが出来ることだったり、自分で選択していくことも出来るところですね。一つのテーマでも一つの切り口だけではないというところを一目で見られるのは、やはりネットなどではなかなか出来ないことで、そこにも紙の良さがあるんじゃないかなと思います。
黒木
 辞典の場合は一つの項目を引けば、その隣に別の項目があるわけで、それをつい見たりするでしょう。それによってまったく関係のない項目まで広がっていって知識が広がってくる。そこが紙媒体の良さだと思います。
白石
 それは書店でもそうですね。書店に行く目的は一つだとしても、周りの本は絶対見ますから、そうすると興味が湧いてパラっと開いてみたりする。それで複数買いをしたりするわけですから。
黒木
 ネット書店だと自分の目的のものだけ買うんだけど、書店に行くと次から次へ買いたくなってそれが困る部分もあるんですけど。辞典や新聞、書店などでも共通して、その隣りにあるものがちょっと気になって見てしまう。そういう意味で紙は大事ですね。
白石
 ゆったりと本を選ぶとかそういった時には紙の媒体はいいのかもしれませんが、その一方ではウェブなどで情報を共有することで新しいことが出来ないかとも考えたりもしています。
黒木
 それでしたら今回の総目録の内容を「読書人」のウェブ上に載せたり出来たらいいんじゃないかなとも思うんです。
白石
 目録に載ったものがウェブにも出るというのはまさに連動ですね。
黒木
 ウェブのいい点は、書目にリンクボタンをつけてクリックすれば、ネット書店、たとえばe-honに飛んですぐに買うことも出来ることですね。
白石
 e-honからの購入ですと、読者が自分で登録した書店で買ったことになるのでそのお店の売上になるから書店を助けることにもなるんですよね。
黒木
 週刊読書人は出版社と書店を応援するメディアでもあるので、読書人ウェブでは無料で書評や記事をすべて読めるだけではなく、そこで気になった本があってボタンをクリックすればe-hon、honto、Honya Club、紀伊國屋書店、amazonのサイトに飛んで買うことが出来るんです。とはいえ読書人がファーストに考えなければいけないのは何かなと思うと、やはり最初は読者ですよね。読者がどういう本を探しているのかということに対して寄り添って、読みたいものを一緒になって探してあげるとかお勧めする。それを徹底的にやることによって、要するにうちに書評などを掲載した本が売れれば出版社への貢献になりますし、さらに言えば本が売れれば最終的には日本の文化や教育への貢献に繋がるじゃないですか。だから読者ファーストに考えて、読者のためになるような新聞を作り、それをウェブに載せて、ウェブで本が買えるようにすることでいろんなところの役に立っていく。そうした仕組みにしていきたいなと思っているんです。さっきも少し言いましたが、役に立つということが先に来ては駄目で、人間を作るというか、成長するためには何をしなきゃいけないかというものがまず先にあって、その結果として技術があるとならないといけない。
白石
 あくまで手段ですから。
黒木
 ええ。そのためにはやはり文学が一番大事だということになるのではないでしょうか。
白石
 かつては学問的な区別もありましたが、今では歴史の先生も国文学を読まなければならないし、国文学の先生は時代背景的なことを知らなくてはいけませんから歴史も読む必要があります。ですから学会自体もそういう方向になっていくといいなと私は思っているんです。
黒木
 昔は「学際」という言葉をよく使いましたが、でもどちらかと言うと一つの分野だけでずっと深掘りしていくのが学会の弊であるとも言えなくはありませんね。やはり周りも見ないといけないでしょう。ところで今回の新しい目録に対して会長だけではなく、会員社の皆さんが持つ思いは何かありますか。
白石
 私どもの会の活動自身はまず目録を作るのが一番の仕事になっています。あとは書店さんでのフェアですね。それは会員社に限ってのフェアになってしまっていますけど、それをもうちょっと広げられないかなと今、考えています。ですからこの目録についても、今まではこの目録を図書館や先生方などにお送りする時に、会員社だけがチラシやパンフレットを同封できたんですけど、今回からは出稿してくださった社のチラシやパンフレットも一緒にお送りすることを可能にしましたので、この目録を利用して自社の広告宣伝活動をしていただければなと思っています。確実に必要とされているところに届きますので。もちろんそれだけではなく、今回目録の名前を変えるということは、確実に欲しいと言っている人たちだけではなく、もっと多くの方に、幅を広げてお届けしようということでもありますから、読書人さんとのタイアップですとか、あるいはウェブでの展開なども検討して行ければというところに話がつながっていくのではないかと思います。
何も壊さず戦わずで伸びることはない

吉田
 先ほどの学際ではないですけれども、日本の学会はどうしても文学なら文学とか古典なら古典というように、それぞれ専門分野に特化した研究者が集まりやすい傾向があるような気がします。これは日本も世界もというように考えると、どうしても研究の幅が広がりすぎてやりにくいということもあるのでしょう。だから比較的限られた範囲で、例えば『万葉集』なら『万葉集』、『源氏物語』なら『源氏物語』といった研究者が多くなっているんだと思うんですね。でも今回のこの目録で、古典を研究されている方が、こんな本も出ているのかと世界の文学などを意識されるきっかけになるのも素敵だなと思います。会でも話しあったのですが、『国語・国文学図書総目録』から、今度は世界も入って『文学・ことば図書総目録』になるわけですから、外国語の研究室とか研究者の方たちにも送らなくては駄目だねという意見が出ました。ですから世界を見ることによって国語・国文学というのが小さくなってしまうのでは決してなくて、むしろもっと拡散して私どもの会と目録をご紹介しないといけないと考えています。
黒木
 目録は何部ぐらい発行しているのですか。
白石
 およそ二万部です。いろいろな配布方法を考えておりますが。
黒木
 それは図書館とかですか。
白石
 個人の研究者などにも送っています。もちろん個人の研究者だけでチェックしますと、一万名を超えるものですから、本当は全部の方にお送りしたいんですけど、なかなか予算の面でそうも行かないので、三年に一冊はそれぞれの先生方にお届けするという方法をとっています。図書館とか書店の外商部などには毎年届けていますが。
黒木
 そうなんですね。個人の方は?
白石
 頒価が本体278円で購入可能です。今までは学会への送り先なんかもやはり日本文学関係の図書館や研究室、個人だったりしたのですが、これを今度増やした名簿をまた作らなくてはいけないだろうと考えています。
黒木
 これから何かをぶち壊して伸びようとするのであれば、戦わなくして伸びることは絶対ないですよ。後退しながら逆転できるなんてことは絶対ない。出版不況と言われるこういう時だからこそ、『文学・ことば図書総目録』のように視野をもっと広げていくんだという立場に立つことが必要ですよね。
白石
 さらには読者の声を吸い上げるような仕組みも作らなくてはいけませんね。
黒木
 例えばですが、目録の中にこの本を読むならこれも読むといいよみたいな紹介があるのもいいですね。ウェブと連動させれば検索も容易になりますし。目録の中でも例えば『源氏物語』を読むのだったら海外文学ではこれを読めばより『源氏物語』が分かるといったような特集をすれば面白い。
白石
 この目録があることで、今言われたようないろんなことが出来るというかたちにしていきたいですね。やはり紙の媒体には人に対して特別な思いを持たせるものだと思うんです。特別な思いはなくしてはいけないので、まず目録ありきだということを皆さんに理解していただきたいと考えています。それをさらに便利にしていくためにウェブやSNSの発信などを利用しつつ、また「読書人」を読んでいる方たちにも考えていただいて、今まで言ってきたような意見に対して皆さんはどう思われるかを問いかけていきたいと思います。
黒木
 やはり紙が一番信頼されているんですよね。ウェブで展開したとしても、基本は紙面に署名記事がちゃんと載っているということに意味がある。それは目録も同じです。刊行会が責任をもって作っているものであるということが一番の信頼だと堂々と言わなければいけませんね。
白石
 いいご意見をいただきました(笑)。
2017年8月25日 新聞掲載(第3204号)
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