連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(21)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年8月29日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(21)

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フィリップ・ガレル(右)とドゥーシェ(2017年7月、撮影=久保宏樹)
JD
 リュミエールに続くようにして、メリエスも姿を現します。興行師としてのメリエスは、映画という発明を目にしてすぐさま、新しく観客を引き込む表現方法であると理解しました。そして自身の持っていた劇場の見世物の一つとして、フィクションを作りました。このような見世物は、私にはどうでもいいものです。私が興味を持っているのは、芸術としての映画です。つまり生きた「生」を見せる芸術です。一方でメリエスが見せていたのは、生きた芝居です。私は興味を持つことができません。フィクションのためのフィクションには、全く興味がありません。その一方で、「生」と混ざり合うフィクションとは非常におもしろいものです。ロッセリーニの映画が革命的だったのは、このことが理由です。ロッセリーニが瞬く間にしてしまったこと、それは映画に対して大きな影響を与えていた、演劇的または文学的な表現を拒否することでした。そして、映画は演劇と文学を裏切らざるを得なくなる。ロッセリーニは両者に拒否する姿勢を見せました。そして、ありのままに撮影された「生」を見せた。それまで誰もしたことがなかったような劇作法です。演劇や文学によって発明された劇作法などは必要ありません。映画とは、ありのままの「生」そのものなのです。これが映画の劇作法です。馬鹿げたことに、このことが多くの人に理解されていない。繰り返します。映画とは「生」なのです。
HK
 人生の一部を見せるという観点からすると、ロッセリーニ自身も、テレビの世界に移ってから、遠のいているのではないでしょうか。そこでは別の問題が出てきたと思います。『ルイ14世の権力奪取』というテレビ映画がありますが、この作品はドゥーシェさんの思い入れの深い作品の一つですね。仏版DVDの付録には、ジャン・ドゥーシェさんによる解説映像が収録されています。
JD
 この作品は非常に重要なものです。『ルイ14世の権力奪取』を通じて、ロッセリーニは、過去の出来事でしかなかった歴史を、映画という形で生き返らせた。つまり死人を生者にするということです。この作品で彼が見せたのは、生を享受しているルイ14世です。そして、生きたルイ14世とは何なのかという問いを立てました。このような強大なアイロニーは、突き止めてみれば、それほど大したことではありません。ロッセリーニによるアイロニーは、アルベルト・セラによって再び問題提起され引き継がれています。『ルイ14世の死』を通じて、セラは観客にルイ14世の宮廷人となり、彼が死ぬのを見つめることを強制します。ルイ14世が死ぬところなど、本当にどうでもいいことです(笑)。それでも、「見ろ!」と、セラは観客を拘束します。これは本当に並外れたことなのです。セラの映画がよく理解されていないのには、理由がないわけではありません。映画が根本的なところで、「生」を見せることを強制するものであること。それを理解するのは、非常に大変なことです。一方で、かりそめの命のようなものを与えながら、「生」を偽装する作品は面白くないですね。そうは言っても、面白いものが全くないわけではありません。
HK
 映画とは「見ること」を強制する芸術である。これは非常に重要な論点だと思います。その一方で、今日の映画館は様々な新しい形を模索しています。つい最近パリの北の外れのラ・ヴィレット公園の中に、パテ(UGCと並ぶ仏最大手シネコン系列)の新しい映画館ができました。フランスではおそらく初めての4DXという形式の上映館が併設されています。通常の映画と異なるのは、椅子が動いたり風が吹き出したりと、視覚以外の感覚に訴えようとするところです。
JD
 私は、その種のものには全く興味がありません。
HK
 すでに映画ではなくなっているということですか。
JD
 その通り、すでに映画とは関係のないものです。言うならば、テクノロジーの産物にすぎません。でも、このように断言するべきではないですね。
2017年8月25日 新聞掲載(第3204号)
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