ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち / 三上 延(アスキーメディアワークス)三上 延著『ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』 愛知学院大学 中林 大貴|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年8月28日

三上 延著『ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』
愛知学院大学 中林 大貴

ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち
著 者:三上 延
出版社:アスキーメディアワークス
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書評キャンパスのお話をいただいたときに真っ先に思い浮かんだのがこの本(書評の上では以下、『ビブリア』とする)だった。大学生にすすめるという目的で書評を書くのであるならば、私の蔵書の中では『ビブリア』が最も適当であると考えたからだ。若者の本離れは年を追うごとに加速し、市場は縮小を続けている。スマートフォンの普及がここ数年で飛躍的に増加し、今や電子媒体で活字を読む時代になってしまった。最近の若者は正しい日本語が使えていないという声を巷でよく聞く。私は若者の本離れが日本語能力の低下に一因していると考える。

『ビブリア』は今年の冬に7巻をもって完結し、累計600万部を超えるベストセラーとなった。今回すすめるのはその第1巻である。内容については本の中の言葉を借りると端的でわかりやすい。
「これは何冊かの古い本の話だ。古い本とそれをめぐる人間の話だ。」

私が『ビブリア』と出会ったのは高校生のとき、あれからおおよそ5年が経過しているが、今も変わらず愛読書の1冊である。はじめてこの本を読了したときのことは今でもよく覚えている。現代ミステリばかり読んでいた私が『ビブリア』を読んだことではじめて自発的に近代文学を読みたいと強く感じた。夏目漱石『それから』、小山清『落穂拾い・聖アンデルセン』、太宰治『晩年』、『ビブリア』で使われた古書4冊のうち日本文学3冊である。『ビブリア』の読了後、この3点はすぐに目を通した。内容が気になって仕方なかったからだ。3点とも感慨深い作品で、これまでの生き方の視点が高くなった気がした。中でも太宰はこれをきっかけに大好きな作家になった。
『ビブリア』は著者の古書店でのアルバイト経験が随所に生かされ、読んでいくと古書店の細部までイメージすることができる。他にも、「アンカット」のような、新書を読んでいるだけではあまりなじみのない用語も出てくるが、それもきちんと解説がされているため、古書を読んだことがない人や古書店にいったことがない人にも読みやすい1冊である。作品の舞台となっている鎌倉・大船周辺は三上氏が学生時代をすごしたよく知る場所ということもあって、世界観が忠実に再現されており、『ビブリア』を読んだのをきっかけにいわゆる聖地巡りとして、鎌倉・大船周辺を散策したのはきっと私だけではないだろう。巻末には参考文献が掲載されており、執筆する上での著者の苦労も感じることができる。

漱石や太宰などに代表される近代文学は現代の若者にはあまり受け入れられない。今回の書評に『ビブリア』を選んだのは、『ビブリア』を読むことで近代文学を読むきっかけになってほしいと考えたからである。私自身も『ビブリア』をきっかけに近代文学を読むようになり、日本語の美しさや繊細さを知ることができたひとりである。スマートフォンなどで電子書籍でも読むことができるようになっているが、『ビブリア』は古書にまつわる物語である。この書評を読んで読みたいと感じた方は電子媒体ではなく紙媒体で読むことで感じられるページをめくる楽しさやドキドキ感を味わってほしい。
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年8月25日 新聞掲載(第3204号)
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