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漢字点心 第193回
2016年8月12日

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音読みでは「ソウ」、訓読みでは「こしき」と読む漢字。「こしき」とは、二段重ねの陶器製の容器。上段の底には小さな穴がたくさん空いている。この段に穀物を入れ、下段でお湯をわかして蒸すのに使う、蒸し器の一種である。

実は、「甑」の左半分、「曾」は、「こしき」の絵から生まれた漢字。お湯をわかす下段が「曰」で、その上が穀物を入れる上段、「八」の形は立ち昇る水蒸気だという次第。なかなかよくできた漢字である。

「曾」は後に、「未曾有」のように、「以前に」という意味でも使われるようになった。そこで、陶器を表す部首「瓦」を付け加えて、改めて作られたのが「甑」だということになる。

ところで、漢詩の世界で「甑に坐す」といえば、真夏の蒸し暑さのたとえ。なるほど、「こしき」の中に座っていれば、蒸し暑いことこの上なかろう。残暑はまだ始まったばかり。あとたっぷり一月くらいは、「甑に坐す」覚悟が必要なのだろう。
2016年8月12日 新聞掲載(第3152号)
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