第157回 芥川賞・直木賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年9月1日

第157回 芥川賞・直木賞 贈呈式開催

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8月25日、東京都内で第一五七回芥川龍之介賞と直木三十五賞の贈呈式が開かれ、芥川賞の沼田真佑氏(『影裏』文藝春秋)と直木賞の佐藤正午氏(『月の満ち欠け』岩波書店)に賞が贈呈された。なお佐藤氏は体調不良により欠席となった。

選考委員の挨拶で芥川賞選考委員の山田詠美氏は「ある人間に出会った以前と以降ではっきりと人生が変わる瞬間を経験した人って少なくないと思いますが、沼田くんの小説はその境目でこぼれていく言葉を拾い上げて、そこに暗い影と明るい光が落ちてくるような感じでした。選評ではぽんと置かれたエピソードをきらきらと輝く接着剤のような言葉で小説をまとめ上げて行くと書いたと思いますが、そのきらきらとした接着剤は文章修行をしても得られないギフトだと思うので大事にしてください」と受賞者を讃え、直木賞選考委員の伊集院静氏は「佐藤さんの作品に私が最初に出会ったのは30年前、『永遠の1/2』という作品でした。その時私はまだ小説を書き始めたぐらいで、色川武大さんと全国の競輪場をまわっている時に、「ここは佐藤正午さんが来るらしいですよ」と言うと、「ああ、そうらしいね。いい作品だったね」とおっしゃられたので、色川さんも読んでいるんだ、すごく羨ましい、自分もそういう作家でありたいと思ったのをよく覚えています。そういう素晴らしい作家が素晴らしい作品を書かれたことは、選考委員というよりも若い頃からの読者として拍手を贈りたいと思います。今回の作品で佐藤さんは、人間の死のかたちとは一体何なんだと、いわば死の余韻みたいなものを書かれたのではないか。この作品の背景に佐藤さんは非常に切ないというか悲しい体験があったのではないかと思えますが、それでも人間はなんとか生きていける大丈夫なんだというところがあって、直木賞として非常にいい作品でした」と話した。
影裏(沼田 真佑)文藝春秋
影裏
沼田 真佑
文藝春秋
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受賞者の沼田氏は「この四ヶ月のあいだに多くの方からインタビューや取材をお受けしたのですが、影響を受けた人物はという質問がよくありました。この質問はなかなか難しくていままで一度もお答えすることができなかったのですが、本日お答えしたいと思います。このたびは受賞者ということで招待客をお招きする権限をいただき、30名ほどの方をこの会場にお招きしました。それこそ北は北海道から南は九州の唐津まで、全国の遠いところから来てくれた人たちです。この方々に自分は大きな影響を受けたのではないかなと思っています。自分がちょっとくさりかけた時に一緒に飯を食ってくれたり、少し自暴自棄になって人間的に弱くなりかけている時に保護してくれたり、あとは金のない時に金をくれたりとか(笑)。この方々に今日はちょっとお礼が出来たかなと思っています」と身近な人たちへの感謝の言葉を口にした。
佐藤氏の挨拶は担当編集者の岩波書店坂本政謙氏が次のようにメッセージを代読した。「名誉ある文学賞の贈呈式に受賞者不在という、心ならずもこのような本来あり得ない状況をもたらしましてまことに申し訳ございません。今日は誕生日なので、地元佐世保でお祝いをやっているかもしれないなどとふざけた発言が、他でもない文春オンラインのネットニュースの見出しとなり、一部顰蹙を買っていることは承知しております。もちろんそれは僕自身の発言に間違いはないのですが、本気の発言ではなく、軽率な冗談に過ぎなかったわけで、事実佐世保で誕生祝いなどやっておりません。今日で僕は62歳になります。この年齢になれば大抵の作家は、というか身を削って仕事を続けてきた働き者の作家は、若い頃の無茶がたたって体のあちこちにガタが来るものだと思います。
月の満ち欠け(佐藤 正午)岩波書店
月の満ち欠け
佐藤 正午
岩波書店
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僕の場合も今現在体力的な不安を抱えています。すぐにどうこうという大きな不安ではありません。ですが毎日体調と相談しながらどうにかこうにか仕事をこなしているという現状です。率直に申し上げてその現状を維持するため、つまりもの書きを続けるために、日本文学振興会のご理解も賜り、今回は僕のわがままで佐世保にとどまることを決めました。せっかく直木賞をいただいたのに、贈呈式出席のため東京へ出てきて、慣れない長旅が原因で地元に戻って仕事が出来なくなるというのでは元も子もありません。みんなでお祝いをしてやるから東京に来いというのではなく、これからも頑張って仕事を続けなさい、そういう励ましの意味で僕はこの賞をいただけたのだと理解しております。もうひと頑張りしたいと思います。ものを書く仕事を続けること、それ以外にこの直木賞という得難い贈りものへのお返しの方法はないと考えています」。
2017年9月1日 新聞掲載(第3205号)
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この記事の中でご紹介した本
影裏/文藝春秋
影裏
著 者:沼田 真佑
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
月の満ち欠け/岩波書店
月の満ち欠け
著 者:佐藤 正午
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
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