読みごたえあるエッセイ一編/若杉妙「私の岩下俊作像」 特集「○○に目覚める頃」/「VIKING」八〇〇号記念|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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文芸同人誌評
2017年9月5日

読みごたえあるエッセイ一編/若杉妙「私の岩下俊作像」 特集「○○に目覚める頃」/「VIKING」八〇〇号記念

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先日、本紙7月7日付けの記事「石川九楊氏ロングインタビュー 書の極北に立つ」を再読していたら、不意と思い出されたことがある。
 青春期の佐賀高等学校時代(二部)のこと、一週に一時間、書道の時間があった。硯、筆、半紙を持参して学んだ。ある日のこと、授業中に課題の字を書いていると、教室内をまわっていた先生が、私の書いた半紙をとり上げ、皆の前で「これは天才の書です」と紹介されたのである。
 これには私はびっくりした、意外な出来事に友達も〓然としていた。日がたつにつれて嬉しさがこみ上げてきた。自分では気がつかない何かいいところがあったのだろう。
 フランスの作家マルセル・プルーストの一人称体の自伝的回想小説「失われた時を求めて」のなかで、主人公がある時、突然、故郷でのある一日を鮮明に思い出す場面がある。
 この作品が、なつかしい出来事をありありと思い出すことを、すぐれた芸術の働きとして論じられてきたことが蘇ってくる。
 今年度のノーベル文学賞を受賞したミュージシャンで作詞家の『ボブ・ディラン語録』をすこしずつ読んでいる。
 「大切なのは、
 音楽が存在するが
 ままになっている、
 そのときだね。」
 (大事なものについて問われ)
 文学にはこのように何か媒体が必要らしい。ボブ・ディランでは音楽がいい媒体になっている。最近、NHKラジオの深夜放送でボブ・ディランの歌「風に吹かれて」を聴いた。
 今月は若杉妙「私の岩下俊作像」(「海峡派」一三八号)が読みごたえのある力作である。
 夫が地域の会合から帰って「これ面白そうだから買ってきたよ」と差し出したのは「火野葦平とゆかりの人びと」という葦平の没後五十年記念に「ひろば北九州」から発行された冊子だった。
 岩下俊作とは「無法松の一生」を書いた人で、北九州の八幡製鉄所に勤めていて、創作研究会を始めた人と紹介されている。
 若杉妙は八幡でスナックバーを営んでいた。古くからの客で文化サークルの会長をしていた人から自費出版の案内状をもらい、出席した。
 二次会に店にきた人たちに「私も自分史を書きたい」と口走ってしまったら「うちの同人誌に来ないかね」と誘われた。
 「VIKING」、八〇〇号記念雑記特集(○○に目覚める頃)に十四人が寄稿。桑原昭「サイレンに目覚める頃」、大西咲子「北川荘平さんのこと」、永井達夫「VIKINGに目覚めた頃」等。
 「全作家」一〇六号。河村直希「ウイスキーを飲むことで人は癒される」、粕谷幸子「あの頃、わたしは…」など。
 「日曜作家」十九号。梅鉢明英の連載「卑弥呼ノート」が充実している。
 この他、坪内稔典「俳句は遺産ではない」(「抒情文芸」一六三号)、正見巌「わがスキー暦回顧」(「北陸文学」八十一号)、詩作品で日和田真理「僕は目を覚ましたんだ」(「舟」一六八号)、稲沢潤子「生きる」(「民主文学」9月号)、島田勢津子「美容室グロッタ」(「黄色い潜水艦」六十六号)にひかれた。
2017年9月1日 新聞掲載(第3205号)
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