季語になった 京都千年の歳事 / 井上 弘美(KADOKAWA)俳句で切り取る京都の歳事50 井上 弘美|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年9月5日

俳句で切り取る京都の歳事50 井上 弘美

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祇園会や真葛が原の風かほる  蕪村
 天明期に活躍した俳人、与謝蕪村は晩年を京都で過ごし、鉾町に居を構えていました。「真葛が原」は祇園八坂神社あたりの葛に覆われた深い闇をイメージさせ、華やかな「祇園会」を浮かび上がらせています。 私たちが聞いている祇園囃子を、蕪村もまた町衆の一人として聞いていたことを知ると、祇園祭の楽しみが深まります。
 東山回して鉾を回しけり  後藤比奈夫
 この句は、祇園祭のハイライト、長刀鉾の辻廻しを捉えています。東山に向かって進んでいた鉾が、四条河原町で北に方向転換する様子を、東山を回すと表現したのです。作者は現役最高齢で今年百歳。蕪村の句に比奈夫の句を重ねることで、祇園祭に時代の厚みが加わります。
 この本は、京都に伝わる五十の歳事を、俳句とともに紹介したものです。
 着倒れの京の祭を見に来り     高浜虚子
 送り火の法も消えたり妙もまた   森 澄雄
 前句は、新緑の中を王朝装束の人々が練り行く「葵祭」を詠んだ句、後句は盆の精霊送り「五山の送り火」の「妙法」を詠んだ句です。これらはよく知られた歳事です。しかし、春、桜の散るころに行われる今宮神社の「安良居祭」や、秋、野菜で作った神輿が繰り出す北野天満宮の「芋茎祭」などは、京都の人にもあまり知られていません。しかも、これらの歳事ははそのまま季語になっています。
 私は京都に生まれ育ちましたが、三十歳で俳句を始めたとき、幼いときから慣れ親しんできた歳事が、ことごとく季語であるということに驚きました。以来、京都の歳事をできるだけ多く、可能な限り繰り返し、見るようにしてきました。京都の千年を誇る歳事が季語になったことで、季語という視点で歳事を見ることができるのです。
 京都の歳事を紹介した本はたくさんありますが、この本の特徴は歳事と俳句によって構成している点にあります。
 京都の歳事には古都の伝統が息づいています。そこには人々の祈りが込められています。観光客のためのイベントではありません。平成二十六年、祇園祭の大船鉾が復活した時、巡行の前夜には深夜を過ぎても人々が訪れ、鉾を取り囲んでいました。鉾町の人々とともに喜びを分かっていたのです。この本には、京都の歳事にかける人々の情熱と心意気を、俳句とともに切り取りました。
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年9月1日 新聞掲載(第3205号)
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この記事の中でご紹介した本
季語になった 京都千年の歳事/KADOKAWA
季語になった 京都千年の歳事
著 者:井上 弘美
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
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