日蓮紀行 滅罪、求道、救国の旅 / 福島 泰樹(大法輪閣)一種の秘儀参入の書  法華行者と絶叫歌人が同居し合体した稀書|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
2017年9月4日

一種の秘儀参入の書 
法華行者と絶叫歌人が同居し合体した稀書

日蓮紀行 滅罪、求道、救国の旅
著 者:福島 泰樹
出版社:大法輪閣
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場所には記憶があり、情がある。そうした概念を30年ほど前に『場所の記憶』にまとめたことがあるが、本書『日蓮紀行』は、日蓮ゆかりの場所の記憶と情をその場に身を置いて「身読」してゆく、「絶叫歌人」福島泰樹でなければ絶対に書くことのできない情念の紀行書だ。

だが、本書は単なる紀行文ではない。法華宗日照山法昌寺住職として、宗祖日蓮を篤く尊崇する想いの中で、日蓮の言葉(御書・御文)と行為を身読・心読・霊読してゆく対話・対決の書であり、絶叫歌人としての歌心をもって宗祖と場所に分け入っていく「奥の細道」を辿る一種の秘儀参入の書であるからだ。法華行者としての福島泰樹と絶叫歌人としての福島泰樹が同居し合体し両性具有した希書。筋金入りの熱烈純粋なる法華行者・日蓮行者としての福島泰樹が「日蓮歌枕」の地を這い巡りながら、祖師の「声」を拾い、拝受し、味読してゆく。

一般に教祖についての論述は大変難しい。著者の理解とスタンスが厳しく問われるから。単なる文献資料の整合的な読みと論理だけでは、その「教祖」の教祖性・聖性・霊性は浮かび上がってこないから。その難しさと厳しさを百も承知で、この希代の歌僧は、日蓮歌枕の地を巡り詠い語り継ぐ。

著者は言う。「紀行とは、時と場所を超えた出会いの謂」(27頁)であると。そして、著者は時と場所を超えて、「被災者日蓮という視座」(98頁)「日蓮は『震災』から出立した仏教思想家である」(122頁)という洞察を確認していく。「母さんお船がお家の上を流れてゆきますよ夢ですかぼくの」という自作の絶唱や中原中也の「サーカス」や河野裕子の歌を口走りながら。「第一章 日本第一の智者となしたまへ」「第二章 国亡び人滅せば」「第三章 今夜頸切られへまかるなり」「第四章 魂魄佐渡の国にいたりて」「第五章 三度いさめんに御用なくば」という五章・五国(安房国・山城国・下総国・相模国・駿河国・伊豆国・佐渡国)の旅路を辿りながら。

「原稿用紙の上にたばしる時雨あらば孤立無援よ濡れてゆくべし」「下駄草履霜焼の指くろい足袋ぬかるみをゆく登校の朝」(福島泰樹の自作歌)

日蓮は時の思想家である。これほど真剣に末法汚濁の世の浄化と現世救済を求めた仏教者はいなかった。本書は、「自界叛逆」(自国の内乱)「他国侵逼(他国の侵略)、「三災七難」の予言を適中させ、天変地異を思想化し、その国土人民の救済の道を示した稀有なる仏教思想家日蓮の真面目を彫琢し顕彰する。そして、心に沁みる巻末「跋」で師父福島日陽を鎮魂する。願わくは本書後半にも随所に自作歌を入れてほしかった、また2段組み400頁に及んでも『大法輪』連載全文を入れてほしかったが、いずれそんな改訂増補版を期待したい。福島泰樹よ、益益健唱なれ!

この記事の中でご紹介した本
日蓮紀行 滅罪、求道、救国の旅/大法輪閣
日蓮紀行 滅罪、求道、救国の旅
著 者:福島 泰樹
出版社:大法輪閣
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年9月1日 新聞掲載(第3205号)
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