占領は終わっていない / 中村 尚樹(緑風出版)対米従属の中身を解明した必読書  鋭い指摘による占領下の日本の事情|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年9月4日

対米従属の中身を解明した必読書 
鋭い指摘による占領下の日本の事情

占領は終わっていない
著 者:中村 尚樹
出版社:緑風出版
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中村尚樹氏は被爆者などを取材した著作で知られるが、今回は「対米従属」の中身を解明した必読の力作だ。第一章 原爆投下からフクシマへ(第一節 無責任の体系「永井隆現象」、第二節 言論統制に抗した一〇〇万人の原爆展、第三節 原爆から原発へと続く人体実験の系譜)、第二章 帝国主義者吉田茂の思想と行動(第一節 吉田茂から安倍晋三に至る核武装論、第二節 天皇最後の勅令)、第三章 外圧と冤罪(第一節 福岡事件 死刑執行された冤罪事件の原点、第二節 帝銀事件 はめられた二人の人気作家)、第四章 日本文化とGHQ(第一節 危機の時代に蘇る二宮金次郎、第二節 宮沢賢治と国粋主義とユートピア)、第五章 米軍の爪痕(第一節 日本の上海と呼ばれた街、第二節 米軍機墜落事故の衝撃)、第六章(第一節 琉球弧に見る非暴力抵抗運動(第一節 奄美の奇跡、第二節 沖縄の「鬼」たち)。

永井隆は、罪なき浦上の信徒が神のはからいで尊い犠牲になったと述べて(浦上燔祭説)、米日政府を免責したと批判されるが、軍医時代は国際法違反を容認する軍国主義者であった(33頁)。軍国主義から平和主義に「転向」したのではなく、カトリック教会への忠実さが一貫していたという中村の指摘は鋭い(40頁)。占領時代の言論統制で絵画は対象外である盲点(画集は対象)をついて被爆の実相を伝えたのが丸木夫妻の「原爆の図」であった。

潜在核武装・核武装合憲論と言えば岸信介や佐藤栄作が有名だが、吉田茂のことはあまり知られていない。中村は、吉田の「軽武装路線」と「核武装容認」が矛盾するものでなかったことを指摘する。在日コリアンの苦しみをもたらした国籍問題は、「最後の天皇勅令」によるものであった。治安維持法改悪と同様に、道理のない法改正は国会に出せないので勅令で強行したのだ。

一九四七年の福岡事件では、過失致死が強盗殺人と誤認されて死刑になった。被害者が中国人であり、GHQの介入によって司法が歪められた。四八年の帝銀事件は、平沢貞通氏が死刑囚となりながら、三九年も収監されたまま九五歳で獄死した。七三一部隊関係者の関与が疑われたが、GHQの圧力で捜査が歪められた。平沢を支援した森川哲郎とその息子である武彦まで政府に弾圧されたことを中村は指摘する。

戦時中にもてはやされた二宮と宮沢が、別の視点からGHQ(二宮)や戦後日本(宮沢)でも高く評価(および批判)された事情の解説、考察も興味深い。田中智学が軍備撤廃と死刑廃止を訴えていたという指摘には仰天した(179頁)。

事故機が住宅地に墜落しないように海に向かって脱出のチャンスを失い、殉職した自衛官もいた。他方米軍パイロットは、自分だけ脱出して無傷ないし軽傷、放置された事故機は住宅地に突っ込んで多数の死傷者(乳幼児を含む)を出す惨状となる。沖縄だけではなく、「第二の基地県」として知られる神奈川でも同様であることは、七七年の横浜米軍機墜落事故でも明らかだ。六八年の九大米軍機墜落事故は、「オール福岡」の運動による板付基地撤去へとつながった。奄美と沖縄の運動の紹介も重要である。

この記事の中でご紹介した本
占領は終わっていない/緑風出版
占領は終わっていない
著 者:中村 尚樹
出版社:緑風出版
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年9月1日 新聞掲載(第3205号)
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