連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(22)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年9月5日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(22)

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演出中のドゥーシェ(中央)
HK
 4DXなどのテクノロジーでは、「映画の」の再発明にはなり得ないですか。
JD
 絶対にそうはなりません。
HK
 少し似た話ですが、今日における映画の死という問題についてはどうお考えですか。映画の歴史を省みると、確かに「映画の死」という言葉は何度も繰り返されてきました。しかし、ここで問題としたいのは現在差し迫った問題となっている「映画館の消失」に関してです。
JD
 映画館の消失という問題は、今日におけるまた別の問題ですね。あなたの疑問に答えるために、さしあたって映画とその観客の関係についてお話ししましょう。いろいろなことを差し置いても、映画が他の映像から区別されるのは、それが一つの強制であるという点においてです。このことが面白いことなのです。「窓」と「覗き穴」の話に戻りましょう。つまり、カメラという眼についての話です。「眼」が開かれるのと同時に閉じられた瞬間から、外部を見つつ内部を参照した瞬間から、全ての可能性(覗き、開かれた視線、etc.)はすでにそこにあるのです。

なぜならば、映画には二つのカメラがあるからです。一つは記録をするカメラであり、もう一つは「観客の眼」というカメラです。観客も一つのカメラなのです。カメラとは世界に対する「まなざし」に他なりません。そして、「記録されたものとしてのフィルム」と「観客の見るフィルム」の間には二重性があり、ドラマティックな戯れがあります。この二重性の戯れも映画の一部をなしています。それほど複雑なことではありません。映画とは、非常に豊かなものです。こうしたことが理由で、作品の内部で二重性の戯れに行き着くのです。観客であるとはどういうことか。たとえばあなたがテレビの前で映画を見ていたとしても、十分に映画の観客たり得るのです。観客であるということに意識的であるという留保をつけてですが。

この話については、再びゴダールの発言を持ち出しますが、彼の言うことに一理あります。「映画館では、映画を見るためには上を向かなければいけない。テレビでは何かを見るためには下を向かなければいけない。」
HK
 (笑)。
JD
 物凄く道理にかなった言い方です。つまり、映画とテレビでは世界に対する「まなざし」が異なります。テレビにおいては、あなたは世界を拡大することはなく、縮小された世界を見る。言い換えると、あたかも世界を所有しているように振る舞う。その一方で、(映画の)観客という立場においては、あなたは世界に対して開かれ、世界の中を行き先もわからず彷徨う。世界はあなたよりも力強い。私が「生」について語るときは、同時に世界についても語っています。そう、世界とは広大なものであり強大なものです。
HK
 ここまでにゴダール、メリエス、テクノロジーの話が出てきました。そうなってくると、ドゥーシェさんが3Dの映画についてどのように考えているかが気になります。3D自体のテクノロジーはメリエスがすでに利用しているので、映画の初期からある技術です。
JD
 ゴダールの3Dを例にとりましょう。私の意見では、彼の作品の中でも最も美しい部類の映像です。ゴダールは、他の軽卒な作家たちがしたことの代わりに、「3D映画」を作り出しました。長年にわたって、軽卒な作家たちがしてきたことといえば、「通常の映画とは異なる奥行きのある空間、目の前に飛び出す映像、画面の前部にある空間や後ろにある空間のようないくつもの層が共存する映像」といった3Dの映像を特徴づける技術を見せることだけでした。ゴダールは、3Dのこのような特徴をもちろん理解しています。それでも、彼が『さらば愛の言葉よ』の中で見せた3Dの映像は、他の作家たちが行ってきたまやかしの3Dの映像とは別の意味を帯びています。ゴダールの作品全般に言えることですが、彼が映画を形作る様々な要素を、自身の作品を通じて考察、再考察し、作品の中で何かを新しい意味を付け加えた時から、全ては単純な技術の域を超たのです。 <次号へつづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕

2017年9月1日 新聞掲載(第3205号)
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