グリックの冒険 / 斎藤 惇夫(岩波書店)斎藤惇夫著『グリックの冒険』 大正大学 高柳良己|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年9月8日

斎藤惇夫著『グリックの冒険』
大正大学 高柳良己

グリックの冒険
著 者:斎藤 惇夫
出版社:岩波書店
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グリックの冒険(斎藤 惇夫)岩波書店
グリックの冒険
斎藤 惇夫
岩波書店
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「グリックの冒険」を初めて読んだのは、つい最近のことになるが、その内容に私は衝撃を受けた。私の中の面白い小説のランキングが揺らいだのだ。

この「グリックの冒険」は、小学生を対象にした冒険小説だが、私と同じ年代であっても十分に読み応えのある小説だ。

ある家の応接間でペットとして飼われていたシマリスのグリックが、伝書バトのヒッポーから自分と同じシマリスが伸び伸びと暮らしているという北の森の話を聞き、そこを目指して外へ飛び出し、冒険を始める物語だ。この作品の中で私は、グリックが困難を乗り越え、成長をする様に何とも言えない感動を覚えた。

グリックは元々ペットだったため、外のことは一切知らず、目的地の北の森も、北に行けばある以上のことを知らなかった。そのため、初めは読んでいて心もとないところはあるが、様々な出会いの中で、グリック自身の力で北の森へ目指せるようになる。

特に、道中で出会ったドブネズミのガンバから別れ際に「君は、君自身の戦いを戦えばいいんだ」と言われてからがグリックの身体的、内面的な成長がより目立つようになる。そしてここからの描写が「グリックの冒険」の面白いところで、グリックの冒険はより困難を極めることになるのだが、その中での成長は、グリック一人では成し得ることはできなかったというのが、この作品の面白かったところだ。

話の根幹に触れるため、詳細は割愛するが、グリックの成長は、途中で旅に同行することになるメスのシマリスののんのん・・・・の存在が大きかった。

のんのんは出会った時から足を悪くしており、グリックと同じく北の森を目指すことになるものの、身体的には足手まといになる場面が時々あった。それに無理矢理グリックに着いて来たため、初めの方はグリックがのんのんのことを煩わしく扱う場面もあったが、共に北へ進む中で、次第にグリックものんのんに気を許すようになり、共に助け合い、共に成長をする間柄に変わり始めた。

話の中で、グリックが北の森を目指す冒険は一人で行くのではなく、グリックとのんのんの二人での冒険に変わったことを痛感した場面は、読んでいて目頭が熱くなった。

そして、この小説の面白い所は、作中の世界観にもある。捕食者や人間以外のグリックに近い動物たちが言葉を話し、人間のように振る舞うため、一見するとファンタジー作品のような雰囲気を秘めているが、場所は現代の人間の社会の中であり、登場する生き物はその中で暮らしている。

それに、グリック達が直面する試練や困難は、現実の世界の中で起こり得るものがほとんどで、特に自然や環境の変化は、より困難で苦しいもののように描写されていた。特に季節が冬になり、寒さや食糧不足は勿論、冬眠の睡魔が襲ってくる様は「ここで夢半ばで死んでしまうのではないか」と真剣に思えてしまうリアルがあった。

そして、「グリックの冒険」に内包するリアルさや、グリックが成長する様をより強く強調していたのは、作中の挿絵であり、物語の魅力をより引き出す重要な要素となっている。

作中で描かれる動物たちは、決してデフォルメされた動物ではなく、リアルな動物として描かれている。一見すると表情に違いがないように見えるが、細かな動きに感情が垣間見え、実際の動物が動いているように感じられる。

この「グリックの冒険」は、決して難しい話ではないため、肩に力を入れずに読んで、その内容に衝撃を受けて欲しいと、私は思う。

この記事の中でご紹介した本
グリックの冒険/岩波書店
グリックの冒険
著 者:斎藤 惇夫
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
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