尼崎武『新しい猫背の星』(2017) この道はいつか来た道 ああそうだよ 進研ゼミでやったところだ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2017年9月12日

この道はいつか来た道 ああそうだよ 進研ゼミでやったところだ
尼崎武『新しい猫背の星』(2017)

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北原白秋作詞の童謡「この道」と、進研ゼミのダイレクトメールに入っている広告漫画でお決まりのセリフをぶつけてしまった歌だ。言ってしまえばこの一首の中に、作者のオリジナルの言葉はひとつもない。しかしこの二つのフレーズをぶつけようという発想そのものにオリジナリティがあるわけだ。「この道」は、白秋が札幌を訪れたときの印象から生まれた詩である。初めて来たはずの道に遠い昔に歩いたようなたまらない郷愁感を覚えているという、センチメンタルな歌。それを「進研ゼミで予習したところがテストに出てきた!」みたいな、きわめて実利的でしかもごく最近の記憶へとひっくり返してしまうのだ。そのギャップを鋭く捉えることができる視点は、まさにユーモアといえるものだろう。

この歌で発揮されている批評眼は、筋が陳腐化した広告漫画を何十年と出し続ける進研ゼミと、子どものための童謡がいつしか教養化してしまった北原白秋との、両方に対して向けられている。詩人そして作詞家として栄華を誇った白秋が晩年にたどった「道」は、国家主義への傾倒の果てにナチス讃歌の作詞に手を染めるというものだった。進研ゼミ広告漫画で描かれるサクセスストーリーの薄っぺらさは、意外と日本人の病理と肉薄している性格があるのかもしれない。

2017年9月8日 新聞掲載(第3206号)
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