【横尾 忠則】歩く小説家と自転車の画家 郷里の紙漉の現場で即興作品|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年9月12日

歩く小説家と自転車の画家 郷里の紙漉の現場で即興作品

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2017.8.28
 朝日新聞be面で岡本太郎を特集するので大阪万博の太陽の塔に対して何か一言をとコメントを求められる。当時はお祭り広場の建造物と太郎の塔は一体化していたが、建造物から切り離されている現在の状況では、美術作品としての自立性は弱い。従ってあの塔はデザインとして機能していたわけだ。

この間から膝が屈伸する度に痛む。入院中も退院後もほとんど歩くことがなかったので、その後遺症だろう。夕方、成城整体院でマッサージを受けるが直接的治療にはならず。

2017.8.29
 画家の山口薫さんとは面識はないが、山口さんから手紙を頂く。手紙というよりメモのようなもので「結婚はダメです。いけません。必要がありません」と結婚に対する怨みつらみのような文の羅列である。もうひとつの夢は誰だか判明しない外国人が「天国のような絵を描いて下さい」と言う。一面だけではダメ、地獄も必要ですと言葉を返す。

歩く必要性を感じて自転車を止めてアトリエまで歩いたり、急勾配の遊歩道を降りて野川公園を半周。ぼくよりずっと若い磯﨑憲一郎さんが後から声を掛けて早足で近づいてくる。彼は毎日かなりの距離を歩いている。まあ、それにしても彼とはよく会う。歩く小説家と自転車の画家である。

2017.8.30
 昨日は二谷英明夫妻の家に泊めてもらったらしい。朝起きて、鏡を見ようとしたら鏡のフレームに顔がスッポリはまってしまった。ぼくと一緒に泊まった顔の大きい俳優さんなら、この鏡の中に顔全部が映り切らないだろうと思うが、試しに「お顔を鏡に映してみて下さい」と言ってみる。その顔の大きい俳優さんはドレドレと言って顔を鏡に近づける。すると顔が鏡のフレームと合体してしまって、顔が抜けなくなってしまった。この俳優さんは大友柳太朗さんではなかったかな? こんな馬鹿げた話は夢にきまってます。

またもやメダカの甕を荒らした奴がいる。野良猫だと思うが、甕の水を時々飲んでいたおでんではないだろうなあ。まさか。

夕方、朝日新聞の書評委員会へ。採りたい本が二冊あったが、誰ともバッティングしないで手に入ったが、明朝、帰省するので早々に引き上げる。
ホテルから見る西脇の町(撮影・筆者)

2017.8.31
 英の車で新横浜駅へ。新神戸駅まで迎えに来てくれていた西脇市岡之山美術館の竹内さんとANAホテルの地下のインド料理店へ。

西脇ロイヤルホテルで美術館の好岡館長と山崎学芸員と合流。その足で、明日からの杉原紙研究所での紙漉による作品の資料や材料などを市内の商社や画材店、文房具店などを廻って集める。

2017.9.1
 吉岡館長、山崎さんが花を用意してくれて墓参りへ。墓地の雑草を心配していたが、いつの間にか一面に苔が生えている。京都の苔寺のようになってくれると嬉しいが。

昼はお好み焼が食べたくなって三人でお好み焼屋へ。高校時代の劇団仲間の来住栄一さんの妹さんに会う。84歳の来住さんもひどい難聴で会話ができないそうだ。どこにも難聴仲間がいる。

午後、杉原紙研究所で紙漉の現場で即興的に作品を作るが、今日は見学で終ると思っていたが、四点完成。

近くに青玉神社があるので参拝。ひとりの旅人が腰が痛く、ヘトヘトになって大きい石に腰を下したところ痛みが消え、その不思議な話を村の長老にしたところ、神様のお力によると言って、その場に青玉神社を建てて祀ったという。そこでぼくもその石に座って膝の痛みが治るよう祈念してみた。それまで車の乗り降りの際膝が痛かったが、気のせいか痛みが抜けた?

美術館に戻ると事務所から国内外からの仕事の依頼のメールが沢山届いていたので、そのひとつひとつに返答する。

2017.9.2
 パリから明日帰国することになっているが、無事に帰国の途につく自信は全くない。一緒だったデヴィッド・ボウイは今日ロンドンへ。「see you again」とシャワーからでてきた裸のボウイとハグして別れる。さあ、ひとりになった、どうしようと困り果てているところで目が覚める。夢はいつも窮地を救ってくれる。

今日も杉原紙研究所へ。その前に膝のお礼に再び青玉神社に参る。今日は2点制作。思わぬ収穫だ。計6点。

3時半頃館長と山崎さんと別れてホテルに帰って、ひと休み。

2017.9.3
 深夜2時、一瞬、星空を走る2つの光体。「ウソ! 何だアレは?」

今日は休息日。午前中部屋でゴロゴロ。夕方、20年間一度も歩いたことのない郷里の道をあてもなく歩く。至福の時間でもある。

夕食は館長とうなぎ屋へ。関西のうなぎは焼くだけで蒸さないらしいが、関東の蒸したうなぎとそう変らない。美味しいと思えばなんだって美味い。
2017年9月8日 新聞掲載(第3206号)
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