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八重山暮らし
2017年9月12日

八重山暮らし⑨

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竹富島のユーンカイ
竹富島の西海岸にツカサたちの歌が静かに流れる。 (撮影=大森一也)


祈り、祈る…。祈り続ける。海に向かって…。かなたに目を凝らし、ただ、ひたすらに……。

早朝の真白な砂浜でツカサと呼ばれる神女らが祝詞を唱えている。まるで打ち返す波のよう。手のひらを引いては招く仕草に吸いよせられる。ツカサの前には、浜から突き出た「ニーランの神石」がある。海上から穀物の種子を携え訪れた神が、この石に舟の綱を結んだといわれている。旧暦8月8日に竹富島で執り行われるユーンカイ(世迎い)は、ニライカナイからのユー(世)、豊饒を乞う祭祀だ。
「ニライカナイ」。その名を初めて耳にしたのは、いつであったか。背筋を伸ばし、水平線の先を見つめる。この海の果てには、ニライカナイという楽土があると教えられた。他界から来訪した神々は、島人に幸をもたらすのだ、と。

ひるがえって琉球王朝時代より、約260年間にわたり課せられた過酷な税制度「人頭税」をはじめ、異郷から降りかかる理不尽に心は疼く。が、いつの世にあっても、瑠璃色に輝く海が、人びとの慟哭を昇華した。うらみごとを波間に返し、遙か碧い飛沫のひとつとした。

朝のやわらかな光が浜辺に満ちた。祈りの情景は、海と空と融和し、無限大に広がっていく…。

かなたを信じる。かなたのすべてを包むがごとく引き受ける。海から授かった緩やかなる世界観が、ただ、ただ、まばゆい。

2017年9月8日 新聞掲載(第3206号)
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