西尾維新対談集 本題 / 西尾 維新(講談社)『西尾維新対談集 本題』西尾維新著 愛知学院大学 増田 優菜|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年9月11日

『西尾維新対談集 本題』西尾維新著
愛知学院大学 増田 優菜

西尾維新対談集 本題
著 者:西尾 維新
出版社:講談社
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舞台の幕が上がる、あるいは本を開く。その瞬間、私たちは別世界へ誘われる。そこに生きる人々や出来事に心を動かされ、共感する。私たちは時に現実に起こったことではなく、舞台や紙の上の物語に人生を変えられる。そうして物語に魅了されていくのだ。心の底から好きだと思える物語に出会えたときの喜びは筆舌に尽くしがたい。しかし、今回私が紹介する本は物語ではない。そんな物語を創り出す作家たちの対話である。

本書では、西尾維新(作家)が五人の表現者、小林賢太郎(劇作家・パフォーミングアーティスト)、荒川弘(漫画家)、羽海野チカ(漫画家)、辻村深月(作家)、堀江敏幸(作家)と創作について濃密な対談を繰り広げていく。この6人について個別に語りだしたら、最初の一人で既定の文字数を優に超えるので泣く泣く控えることにするが、彼らに共通するのは、優秀なクリエイターだということである。表現方法や作風は全く違うが、彼らが紡ぎだすどの物語にも、多くの人の心を動かし、愛される力がある。そんな彼らが、物語をどう創り出すのか、登場人物のキャラクターについて、最終回のとらえ方、才能とは何か、作家とは何か、互いの作品などについて、深く真摯に熱く語り合う。舞台や漫画、小説などの作品を通してではなく、彼らが本人として語っているというのは新鮮であり、創作の第一線で戦う彼らが日々直面する現実を垣間見ることもできる。相手の話に共感したり、驚いたり、会話の中からフッと答えが浮かんだり、話がワッと盛り上がる瞬間、冗談っぽく話している場面など、まるで目の前で会話が繰り広げられていると錯覚するほどのライブ感がある。それだけではない。本書は、雑誌でよく見る対談とはまた違い、新作の宣伝でもなければ、雑誌の編集者がオファーしたわけでもない。自身が表現者である西尾維新が自らオファーの手紙を出し、創作について語るためだけに対談が行われている。

本書は将来表現者になりたい人にとっては、第一線で活躍する先輩の話を聴ける(読める)貴重な場となるだろう。また、登場する作家や作品のファンなら創作過程や裏話を知ることができるので、楽しめること間違い無しである。しかし、どちらにも当てはまらない人でも楽しむことができるのが本書のすごいところだ。創作について語るとき、引き合いに出されるのは彼ら自身の作品だ。どの対談でもお互いに相手の作品を読み込んでいるので、プロがプロの作品のいいところについて深く切り込んでいくことになる。その会話を追っていくうちに、アレもコレも読みたく(見たく)なるのである。手を出したら最後、話題に上がった作品はもちろん、残念ながら名前の出なかった作品まで芋づる式に手を出さざるを得なくなるのである。この対談には素敵な物語との出会いもたくさん用意されている。

この書評はあくまでも前置きにすぎない。これをきっかけに『本題』に入っていただけたら幸いだ。 
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年9月8日 新聞掲載(第3206号)
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この記事の中でご紹介した本
西尾維新対談集 本題/講談社
西尾維新対談集 本題
著 者:西尾 維新
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
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