穂村弘『シンジケート』(1990) 桟橋で愛し合ってもかまわないがんこな汚れにザブがあるから|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2017年9月19日

桟橋で愛し合ってもかまわないがんこな汚れにザブがあるから
穂村弘『シンジケート』(1990)

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シンジケート(穂村 弘 )沖積舎
シンジケート
穂村 弘
沖積舎
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「がんこな汚れに、ザブがある」というフレーズは、花王の洗剤・ザブの商品パッケージに書かれていたコピーである。1960年の発売当初から、1989年ごろまで用いられていた。テレビCMのキャッチにも使われていたので、1962年生まれの穂村弘くらいの世代には馴染み深いコピーだったのではないかと思う。最近きかなくなったと感じる方も多いだろうが、それもそのはずで1999年に販売終了になっている。

80年代後半、バブル期の大量消費社会を反映し台頭したのが俵万智や穂村弘といったライトヴァースの歌人たちだった。カンチューハイをはじめとした商品名をためらわずに使って時代の空気を描き切ろうとする姿勢は、上の世代からは「俗」であると批判されるケースも珍しくなかった。そしてその流れの中でも、コマーシャルのキャッチコピーそのものをパロディ的に引用してしまうような歌人は穂村弘くらいであり、その軽薄さは群を抜いていた。

しかしこの歌はそのインパクトから現在も長く語り継がれている。「桟橋で愛し合ってもかまわない」理由は、普通だったら「誰に見られても構わないくらい愛しているから」だったりするだろう。しかし実際に提示されたのは、「洗剤で落とせるから」というロマンティシズムのかけらもない回答である。ここまで非人間的な人物像をリアルに描き出せたのは、「パロディ」という技法が持つ負の力を鋭く見抜いていた言語感覚のたまものだろう。
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2017年9月22日 新聞掲載(第3207号)
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シンジケート/沖積舎
シンジケート
著 者:穂村 弘
出版社:沖積舎
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