【横尾 忠則】小学生気分で「男の子」「女の子」/死さえサプ ライズな土屋さんと散歩|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
2017年9月19日

小学生気分で「男の子」「女の子」/死さえサプ ライズな土屋さんと散歩

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2017.9.4
 膝の痛みにグルコサミンと膝サポーターと青玉神社の三位一体で快復に向っているようないないような感触。

午前中、好岡館長と同級生の民岡君とで実家跡や近所、思い出の場所などの写真を撮りに行くが、メタモルフォーゼされて面影はない。古里は遠くなりにけりだ。せめて古里のうどんは変らないだろうと、探し廻るが4軒とも定休日。では、お好み焼と走り廻ったがこちらも定休日。月曜日が定休日って昔は床屋ぐらいだったはず。

明日のサムホール展の審査のために山下裕二さん到着。市長主催の夕食会をホテルのレストランで。地元、自慢の黒田庄肉は如何でしたか、山下さん。数年前の全日本牛肉コンテストで地元の黒牛が優勝。わが家はそれ以来、西脇から取り寄せている。神戸肉として全国に出廻っている最高級の肉は黒田庄の黒牛です。

2017.9.5
 今年のサムホール作品は1600点。体育館に並べられた全作品を審査。2時間で入賞作品も決定。最初は低調だと思ったが賞候補作にはレベルの高い作品が残った。

山下さん2時のバスで新大阪駅へ。

ホテルに戻って2点目の絵にとりかかる。ホテルの部屋の窓際であくびをするタマ。その背景は西脇の山並。タマ故郷に帰るの図。

2017.9.6
 午前中、部屋で絵を描いたり、日野原重明先生の本を読んだり。

昼は美術館の近くのレストランで小学校時代の同窓会を。小学生気分になって、「男の子」とか「女の子」と呼び合うのがおかしい。男の子のひとり藤井良己ちゃんはぼくがジンジャーエールを注文したことで、高校時代の英語劇「マーダー」の一シーンのぼくのセリフを思い出した。良己ちゃんが客としてバーテンダー役のぼくの店に現われて、「飲み物は何があるか?」と聞くと、ぼくが「シルバービアー、ビンボー、ジンジャーエール」と答えるのだが、彼はぼくのセリフを62年も経た今、記憶しているのには驚嘆した。何と天才的な記憶力だろう。彼は英語が得意で県下の英語の模擬試験で2番になったくらいの秀才である。

2017.9.7
 土屋嘉男さんが階段から落ちて2回も入院していることは知っていたが、退院したら連絡があると思っていたが、それにしては長過ぎる。家や事務所に連絡をしても電話が通じない。そしたら、何んと半年前の2月8日に亡くなっているではないか。土屋さんは人をかついだり、驚かしたりするのが大好きだから、きっと自分の死さえ、サプライズにしちゃったんじゃないかな。土屋さんは家が近いのでよく会っていたが、どこか非現実的な人で、生きながらあちらの世界の人って感じだったので、死んだからと言っても何故かちっとも不思議ではないし、驚きもしない。どんどんあちらの世界が充実してきたので、死はどーってことのない出来事のように思えてきた。

今日は3度目の杉原紙研究所へ。この地の小学校の校長だった小林信次君も行くことになった。好岡館長、山崎さん、計4人で行く。即興的に1点制作する。計7点になる。帰りには膝のご利益のある青玉神社に参る。

ホテルに戻って2点目の絵を完成。
「HANGA JUNGLE」展の関係者と東天閣にて

2017.9.8
 西脇から神戸へ移動。妻、徳永と合流。

横尾美術館の「HANGA JUNGLE」展のオープニング。記者会見は活発な質疑応答でエキサイティングだったが、相変らずというか、益々難聴が激しく、対話は通訳付きである。

オープニング・セレモニーでは恒例の井戸知事の一句「繁栄の影が色濃く残りたる街のジャングル哀愁たゞよう」をプレゼントされる。今回の知事の句は特によかったと浅田彰さんの評。

夕食は蓑館長、町田市立国際版画美術館、東京新聞、南天子画廊青木さん、ゲストに浅田さんを交えて東天閣へ。

2017.9.9
 ホテル・オークラをチェックアウトした足で兵庫県立美術館で開催中の「怖い絵」展を観る。ロマン派の絵が中心だが、「怖い絵」というタイトルに惹かれて大好評。アカデミックな「ヨーロッパのロマン派」展じゃここまでは当らなかっただろう。現実的には北朝鮮の方が遥かに怖いのだが、外的な社会的恐怖よりも内的な霊的への関心が高まっているのかも知れない。ロマン派絵画はぼくのアイデアソースなので、あまり露呈してもらいたくないんだなあ。

2017.9.10
 旅行で留守の間にアトリエがきれいに片付けられ、庭の雑草まで整備されてスカッとなった。

アトリエの一角に畳を入れて和室を作る計画もある。環境を変えることで気分も、作品も変る。

旅行中毎日のように制作していた習慣をそのまま引きづって帰って来たのか、早速、絵の制作に入る。

土屋嘉男さんの奥さんから、お別れ会の電話あり。

夕方、土屋さんと歩いた野川公園へ。土屋さんと一緒に散歩している気分になる。
2017年9月22日 新聞掲載(第3207号)
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