連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(24)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年9月19日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(24)

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バーベット・シュローダー(右)と
JD
 私の考えでは、『さらば愛の言葉よ』を通じてゴダールは、彼自身の仕事の、つまり彼の持つ映画についての考えの極地に達したのだと思います。長年にわたって問い続けてきた問題への、言い換えるならばアンドレ・バザンによって問われた「映画とは何か」という問題への返答です。映画とは連続性ではなく、不連続性である。そして、もし「生」についての考えを巡らせるのならば、「生」と「存在」の間には大きな隔たりがある。もちろん生きるためには、まず存在しなければならない。存在することなしに、生きることはできない。つまり、基礎にあるのは存在であり、「生」とはその結果に過ぎない。生きとし生けるものすべては、自らの存在を肯定するために、連続する時間という観念の中で「存在」を確認する。その一方で「生」とは、どのようなものでも、ごく短い瞬間でしかない。「生」とは瞬間の集合体である。一つの瞬間があり、また別の瞬間がある、そしてまた別の一つの瞬間が訪れる。それぞれの瞬間とは別の瞬間に対する断絶に他なりません。「生」とは断絶であり、連続性ではない。これが映画の根本にあることです。映画とは「生」のことであり、「存在」ではありません。

そうはいっても、「生」と「存在」は根本的なところで関わり合い、互いを豊かにしています。この両者の間には一種の対立が、つまり共存しつつも離反し合う必然性があります。それでも、「生」がより重要な観念です。そして、偉大な映画作家とは、「存在」に対するよりも、「生」に向き合った、「生」の映画作家と言えます。

日本の読者により親しみやすい例として、溝口健二を例にあげます。溝口は私にとっても非常に重要な映画作家です。私が溝口を重要な作家だと考えていることには理由があります。根本的なところで、彼の映画が「生」に基礎を置いているからです。小津安二郎すら、溝口ほどには「生」というものに向き合っていないと思います。それでも、小津の映画は、並列という観点から見ると非常に興味深いものです。小津の作品を見ると、うわべではすべてが結びついているように見えます。しかし、現実には各々の映像の内部で続く、二つか三つの平行した世界があるだけです。このような同時進行していく別々の「生」を見ることは面白いことです。しかし、溝口の方が小津よりもより力強い。「生」は「存在」よりも強くなければいけない。それでいて、溝口のすべての作品は「存在」についての問題しか扱っていません。これゆえに、溝口は天才なのです。
HK
 長年にわたって、溝口健二を最も優れた映画作家だと公言していますね。
JD
 はい。ルノワールと並んで最高の作家です。他にも好きな映画作家はたくさんいますが、もし最も好きな作家を挙げるならば、この二人を選びます。多くの偉大な作家の中でも、この二人が私にとっての最も重要な作家です。もちろん他の作家も好きですし、あなたがあげるだろう作家にも同意はします。
HK
 ところで、偉大な作家と良い作家の違いとは何でしょうか。
JD
 その点についてですが、ただの・・・良い作家に対して、私は少し意地の悪いところがあるといってもいいかもしれません。良い作家とは、依然として物事の外面しか見ることがなく、すでに自身がしたことに対して何か可能なことを模索する作家のことです。偉大な作家とは、「生」から映画を生み出す作家です。他に言いようがありません。すでに説明したことですが、「生」というものは私たちの想像を超えていくものです。
HK
 どのようにして偉大な作家と良い作家の違いを知ることができるのですか。
JD
 各々によります。作品の中の「生」を、見ることができるかできないか。感じることができるかできないか。
HK
 そのような「見る」もしくは「感じる」能力のようなものは習得できるものなのでしょうか。

<次号へつづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕
2017年9月22日 新聞掲載(第3207号)
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