君は月夜に光り輝く / 佐野 徹夜(KADOKAWA)『君は月夜に光り輝く』 佐野 徹夜著 名古屋市立大学 原 司 |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

  1. 読書人トップ
  2. 書評
  3. 君は月夜に光り輝く / 佐野 徹夜(KADOKAWA)『君は月夜に光り輝く』 佐野 徹夜著 名古屋市立大学 原 司 ・・・
【書評キャンパス】大学生がススメる本
2017年10月2日

『君は月夜に光り輝く』 佐野 徹夜著
名古屋市立大学 原 司 

君は月夜に光り輝く
著 者:佐野 徹夜
出版社:KADOKAWA
このエントリーをはてなブックマークに追加
君は月夜に光り輝く(佐野 徹夜)KADOKAWA
君は月夜に光り輝く
佐野 徹夜
KADOKAWA
  • オンライン書店で買う
「君は月夜に光り輝く」は、発光病という不治の病にかかっている少女、渡良瀬まみずと、あまり感情を表に出さないが、心の中は感情的な少年、岡田卓也の物語である。ある日、クラスの代表としてまみずのお見舞いに行くことになった卓也は、病室で彼女と出会う。すると彼女は、入院生活により自分が叶えることのできないことを代わりに叶えてほしいと卓也に頼み、卓也はそれを受け入れてその願いを叶えるべく行動をする。そうして始まるこの物語は、会話が多めですらすらと読める、だがじっくりと読んでほしい物語だ。この物語の根本にあるのは、死に対する考え、つまり死生観であると私は思う。まみずは楽しいことが辛くて生きたくないと言い、卓也は大切な人が死んでも続く残酷な世の中を生きるのが怖いと言う。そのすれ違いが二人を突き放し、そして何度も惹きつけ合うのが魅力的なところだ。病気が悪化するにつれて全身が強く発光するという発光病の存在が、物語において些かリアリティに欠けたり、他の病気ではだめなのかと必要性に疑問を感じたりすることもあったが、そこは作者のオリジナリティなのだろうと片付けておく。

この物語は裏表紙のあらすじで結末までの展開は何となく予想が付く。では、この小説の見どころは何か。それは登場人物の考え方に触れることだと思う。後半にいくにつれて顕著になる卓也の死に対する考え方には、共感できる所が多い。自分に近しい人の死が間近にあるとき、自分はその人のために何ができるか、という物語の命題に対し、卓也はその人の願いを自分が代わりに叶えようとした所は、自分もそうするだろうと共感できた。しかし、その願いは普通の人が普通に生活していれば叶えられることであり、その切なさは胸に来るものがあった。

またこの物語からは、卓也の未熟さが残る思慮から発せられる死の奥深さを、読者に投げかけているように感じられる。一度読み終えた後、考えてみてほしい。自分にとって生きるとはどういうものであり、死は何をもたらすのかを。毎朝ポストに入っている新聞を開いてみると、一面に大きく殺人事件が載せられていることもあれば、地方欄に小さく、昨日の交通事故死亡者は一人、と数字だけで書かれていることもある。人間の生の価値は、本来優劣の付けられるものではないのに、世界は一体何を基準にしてその死の価値を考えているのだろうか。そんな風に私は考えさせられた。

ストーリーが進むにつれて徐々にまみずと卓也の心の距離が近づいていくが、結末を想像すると胸は苦しくなるばかり。しかし、最後まで読まなければならないという使命感に駆られるような不思議な感覚を覚える。それは心配する周りの友人たちを差し置いてまでまみずのために尽くす卓也の姿と、それを受けてまみずが喜怒哀楽するという青春の一ページに、いつの間にか虜にされているからだと私は思う。共に語らい共に叫んで共に恋をする。そんな甘酸っぱい青春の物語を是非読んでほしい。もしかしたら自分の人生を見つめ直す、一つのきっかけとなるかもしれない。
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年9月29日 新聞掲載(第3208号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事の中でご紹介した本
君は月夜に光り輝く/KADOKAWA
君は月夜に光り輝く
著 者:佐野 徹夜
出版社:KADOKAWA
以下のオンライン書店でご購入できます
【書評キャンパス】大学生がススメる本のその他の記事
【書評キャンパス】大学生がススメる本をもっと見る >
文学 > 日本文学 > 青春関連記事
青春の関連記事をもっと見る >