連載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(25)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年10月2日

連載 映画/映画作家/映画批評
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(25)

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左からフレドリック・ボノー(シネマテーク館長)、コスタ=ガヴラス、アンドレ・テシネ、ドゥーシェ
JD 
 作品の中の「生」を「見る/感じる」能力について、私の考えでは、これは習得しなければいけないことだと思います。それは、作品の「外」からではありません。作品の内部から、映画自体を通じて、学ばなければいけないのです。
HK 
 そのためには、良い・・作品をたくさん見なければいけませんね。
JD 
 その通り、良い・・作品をたくさん見なければいけません。そして、作品を見ながら自分で理解していかなければいけない。また、作品を愛さなければいけない。時には、心奪われるような作品に出会うこともあるかもしれません。それでも、あくる日にふと気がつく瞬間が来ます。あの別の作品ほどには良い作品ではなかったと。このような経験は、誰もが一度は持ち得るはずです。こうした経験から映画に対する審美眼のようなものが生まれていくはずです。
HK 
 ところで、今日でも、例えばルノワールや溝口に匹敵するような偉大な作家がいる、もしくは彼らの作品に匹敵するようなものが生まれていると考えていますか。
JD 
 もちろん。
HK 
 例えば侯孝賢のような作家ですか。
JD 
 もちろん。確かに私は、ここ半年近くにわたって侯孝賢の作品の分析をしていました。彼が偉大な作家であるからです。台湾という国家については理解しています。加えて侯孝賢が台湾人であるのも十分に理解しています。それでも、私にとって、彼は中国を体現した作家なのです。侯孝賢は、彼自身の生まれ持ったアイデンティティという観点からすると、大陸の育んで来た文化と密接に結びついた作家だと思います。端的にいうと、侯孝賢とは優れた眼を持った作家です。例え台湾人であろうと、中国大陸に住む中国人であろうと、変わりのないことです。どちらも中国人です。そして、彼はその文化を誰よりもよく見せる。この文化という点でも、偉大な作家というものを考えることができます。そして、スクリーンを通じて、文化とは何かと問うことができます。偉大な作家とは自らの持つ文化をよりよく表現する作家のことです。

誰がフランスという国をよりよく表現しているかというならば、真っ先にルノワールが挙げられます。日本でも同じような作家がいますし、中国にもいます。偉大な作家とは、その国の文化そのものなのです。シェークスピアがイギリスです。プルーストがフランスです。バルザックもフランスです。文学を考えるならば、他にもモリエールなどの作家が考えられます。これが文化です。
HK 
 偉大な作家たちが文化を創るということでしょうか。
JD 
 その通りです。つきつめてみれば、文化を創って来たのは偉大な作家たちです。
HK 
 彼らは、各々の時代におけるアヴァンギャルドであると言ってしまってもいいのでしょうか。
JD 
 確かにその通りです。加えて言うならば、アヴァンギャルド以上の存在です。偉大な作家とは、文化を理解し定義し感じさせる存在のことです。

フランスとは何かということを問うのならば、多くの大作家たちが想像できます。モリエール、ラシーヌ、ラ・フォンテーヌ、ヴォルテール。このような作家たちがフランスです。しかしもし、マリーヌ・ルペンのような人がフランスであるかと問うならば、答えは簡単です。彼女ではフランスを体現することはできません。
HK 
(笑)
JD 
 どの国でも同じようなことが言えるはずです。
HK 
 フランス映画というものを考えると、フランス国内外で、ルネ・クレール、ジュリアン・デュヴィヴィエ、クロード・オータン=ララのような、フランスを見せつけるような作家が、多くの人に好まれて来ました。おそらく日本では、多くの人が、彼らの映画にしか出てこないような作り物のフランスのイメージに魅了されていたと思います。

〈次号へつづく〉
〔聞き手/写真撮影=久保宏樹〕
2017年9月29日 新聞掲載(第3208号)
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