『幻の黒船カレーを追え』(小学館)刊行記念  著者・水野仁輔さん公開トークイベント|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 特集
2017年10月11日

『幻の黒船カレーを追え』(小学館)刊行記念 
著者・水野仁輔さん公開トークイベント

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「探しているカレーがあるから仕事を捨て、家族を残して海外に渡りたい」。

これまで会社勤めと“カレーの人”の二足の草蛙で四〇冊以上ものレシピ本を出版してきたカレー研究家の水野仁輔さんには、長年抱いてきた疑問があった。
約一五〇年前の幕末、インドからイギリスを経由して上陸したと言われている日本のカレーは一体どんなもので、その味はどうだったのか? 
その疑問は必然日本のカレーとは何かという問いに繋がって、水野さんは遂に幻の「黒船カレー」(=ブリティッシュカレー)を探す旅に出る! 国内十か所の港を巡り、海を渡ってヨーロッパまで国内外を徹底取材。水野さん一家の人生も激変! 
八月二三日、水野仁輔著『幻の黒船カレーを追え』(小学館)刊行記念のトークイベントが神保町・三省堂書店本店で開催された。日中の暑熱が残るカレー好適日の一夜を取材した。 (編集部)

水野 仁輔氏
■神保町・共栄堂のスマトラカレースマトラカレー

「今日ここに来る前にカレーを食べてきた方はいらっしゃいますか?」と会場に問いかけた水野さん。自身はもちろんカレーを食べてきたと語り、待ち合わせまでの10分で神保町で一番好きな共栄堂のカレーを食べようと決めて、食べ終わって出てくるまで何分かかるかストップウォッチで計ってみたと話した。

「店の階段を降りるまで10秒、着席から注文まで15秒、そこから20秒後にカレーとコーンスープが出てきて食べる準備が整うまで1分、そこから4分45秒でポークカレーを食べ、コーンスープが熱くて3分15秒かかって食べ終わり、挨拶して会計して階段を上がって9分45秒と、10分あれば共栄堂は食事して出て来られる(笑)」。
■「黒船カレー」よ、君はどこに?

本書のタイトルにもなっている「黒船カレー」は実は造語で、水野さんはもともと「ブリティッシュカレー」と呼んでいたと言う。

「ブリティッシュカレーを探して食べたいと思った理由は、誰も知らないからということが大きかった。日本のカレーはイギリスからやってきたということは割と知られている、でもそのイギリスのカレーがどんな味だったのかということに関してはほとんど誰も知らない」。

水野さんが知る限り、日本のカレーの歴史について、イギリスに行って実際に食べて調べてといった一次情報で書いているのが、『カレーライスと日本人』(講談社現代新書)を書いたアジア食文化研究家の森枝卓士さんだと紹介。 

「僕が知りたかったことはひと言で言えば、150年前の「黒船カレー」は美味しかったか、美味しくなかったか」。

これはとにかく食べてみるしかないと、水野さんは日本国内のカレーが入ってきた可能性のある港を十か所、文明開化ルートの「函館、新潟、横浜、神戸、長崎」、海軍ルートの「室蘭、横須賀、舞鶴、呉、佐世保」をリストアップして巡ることにした。長崎を皮切りに家族旅行や出張にかこつけて日本各地の港を北へ南へ。ところが小さな発見はあるもののどこに行っても「黒船カレー」は食べられず、新潟のイタリア人、横浜のスイス人など、謎は深まるばかり……。
カレーの写真をながめながらのトーク

■ロンドンのチキンティッカカレー

ここからトークは、水野さんがこれまで「黒船カレー」を探す旅で食べてきた二〇枚程のカレーの写真をスライド上映しながら進められた。新潟・イタリア軒の欧風カレー、ロンドンのパブで食べられるアングロインディアン料理のチキンティッカカレー、パリの老舗レストラン「ラ・クーポール」の名物ラムカレー、ベルリンの屋台で食べられるカリーヴルスト(ソーセージ)、フィッシュ&チップスのカレーソースなど、どのカレーも見た目は同じようなカレーだが、水野さんには一つひとつのカレーが全く違う食べ物のように見えて、人に例えれば二〇人の別人格を相手にしているような感じなのだと語った。そしてアイリッシュカレーについては……。
■再びイギリスへ、アイリッシュカレー

「ロンドンから帰国した後、どうもアイルランドにアイリッシュカレーがあるらしいとわかった」。

水野さんは再びイギリスに入り、陸路でアイルランドに向かう。衝撃の出会いはダブリンに向うフェリーの中だった。

「アイリッシュカレーは黒船カレーに近いものだった」。

最終的に、水野さんが食べたかった「黒船カレー」は食べられたのだが……。

「でも僕はこの先知りたいことが山ほどあって、今の時点で大きな結論を出せているわけではない。面白いのはこの一五〇年の間にイギリスで消えつつあるカレーが日本で国民食になっているこの対比で、それがこの四、五年の間苦労した僕の好奇心を支えていたものだった。現時点での結論では、今日本にある日本人が一五〇年かけて育てたジャパニーズカレーをもっと再注目、再評価していくべきなんじゃないかと。そういうことに注目する人は僕ぐらいしかいないし(笑)、これからも探求を続けて何か新しい事が見つかったらアウトプットして、十年後くらいに“幻の黒船カレー”を見つけた、なんていうご報告も出来たら」と語った。

本書の巻末には、ブリティッシュカレーの最古のレシピを残したミセス・ビートンとイライザ・アクトンという二人のレシピが掲載されている。水野さんは是非二人のレシピでカレーを作って食べてみてほしいとトークを締めくくった。

以下のオンライン書店でご購入できます
2017年10月6日 新聞掲載(第3209号)
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この記事の中でご紹介した本
幻の黒船カレーを追え/小学館
幻の黒船カレーを追え
著 者:水野 仁輔
出版社:小学館
以下のオンライン書店でご購入できます
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