【横尾 忠則】絵を描き始めると鼻がよく出る、気の流れが変るから。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
2017年10月10日

絵を描き始めると鼻がよく出る、気の流れが変るから。

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デュラン・デュランのニック・ローズとアトリエで
2017. 9.25 
和田誠君が「週刊文春」の最新号を持って来る。無言のままいるからぼくも無言を通す。いつの間にか和田君は消えていなくなり、ぼくはデパートの売場に来ている。ひとつ上の階ではイラストレーターの会合を開いている様子だが、ぼくは和食のレストランへひとりで入る。デパートの中のレストランというよりも料亭のようだ。食べ終ってレジに行く。料金を払おうとすると、仲居さんがやってきて、「お母さんからいただいております」と言って、お金を受け取ってくれない。お母さん? ってどこの女将やろ? と考えていると、その仲居さんは「それよりお母さんが頼んではる娘さんの絵を早よう描いてあげておくんなはれ」と言う。そこでぼくは「ハッ!」とする。そーいえば10年ほど前に神戸の料理屋「大島」の女将から娘さんが今度花隈の芸者になってお座敷に上りますので、その記念に、あの娘の肖像画を描いておくれやす、と頼まれたことを思い出した。だけどもう10年前だ。預かっている娘の芸者姿の写真は手元にない。どこかにやってしまった。えらいこっちゃ、徳永に聞いて写真を探してもらうしかない。料理の料金も取ってもらえないしと、あせりまくる。と突然目が覚めたけれど、一日も早く描いて渡さなきゃ。でも十年も経っている。今さら、もう一度写真を送ってくれませんか、と恥ずかしくて言えない。こんなことを考えている時点でぼくは目を覚ましているが、想いはまだ夢の中で、目覚めたといえども、問題を解決していない。他の仕事を全部断わっても、一日も早く肖像画に取りかからねばと思うが、次第に覚醒するに従って、こんな事実はなかったことに気づく。

恐ろしい夢は目覚めと同時に、「あゝ助かった」と夢の神様に救済されることになっているのに、まだ夢と現実の境界を彷徨している。

夢から覚めたものの胃がモヤモヤして軽い嘔吐感があって気持悪い。昨日まではこんな症状がなかったのに、病気ってこんな風に突然やってくるものだろうか?

房さんが車で迎えに来てくれて東宝スタジオへ。山田組の監督ルームの一角に新設されたアトリエで午前中に一点仕上げる。

やっぱり胃の調子が気になる。玉川病院へ。旅の疲れとトークショーのストレスと診断される。

デュラン・デュランのリーダー、ニック・ローズ来訪。ぼくのことをまるでFBIのように根掘り葉掘り調べ上げている上にさらに根掘り葉掘り引き出そうとする。
安藤忠雄さんと筆者の家族(撮影:徳永明美)

2017. 9.26 
都心の高層ビルにいる時に大きい地震に襲われた。高層ビルだからこんなに揺れるのか、それとも本当に大きい地震なのか? 夢でよかったけれど、覚悟を決めていたのか、パニックにならなかったのが不思議だ。

相島君の韓国土産の高麗人参茶を飲むと胃のモヤモヤが治まる。十和田の温泉に入ったあと、グーンと冷え、その上ソフトクリーム3個食べたことで内臓が冷却したに違いない。疲労とストレスとは違いまっせ。

国立新美術館の安藤忠雄展のオープニングに。黒川紀章の建物の中に安藤さんがとんでもない建築空間を創造した。

2017. 9.27 
日本の歴史にも名を残しているという平安時代の生き神様が現代に蘇って来られるというので座敷で数人の人と待っている。やがて男の人が頭から布を被せられた老女を抱えてやって来た。そして頭の布を取った。その生き神様はエレファント・マンのような容姿をしていたが、恐ろしいとは思わなかった。むしろ神々しく思えた。不思議な夢である。

午前中、東宝スタジオへ。今日も一点仕上げる。食堂で濱田さんと。

夜、朝日新聞の書評委員会へ。
アトリエにて渡辺真理さんと(撮影:徳永明美)
2017. 9.28
 午前中東宝スタジオで一点仕上げる。

昼は成城で寿司を食べながら山田さんと「妻よ薔薇のように/家族はつらいよⅢ」のタイトルバックの打合せを。

午後、「エクラ」誌で渡辺真理さんの連載インタビューを受ける。
2017. 9.29 
東宝スタジオへ。一点描くが今日はひとりも来なかった。

午後、対談集「創造と長寿」のあとがきをインタビューで締める。

妻の誕生会を神田きくかわ上野毛店のうなぎ屋でスタッフたちと。もう少し近ければいいのに。 

2017. 9.30 
絵を描き始めると鼻がよく出る。これは気の流れが変るからだ。

デュラン・デュランのポスターを気に入ったロスアンジェルスの彼等のアーカイブスから別のポスターの依頼あり。ポスターは本職というよりバイトなのよね。
2017. 10.1 
日曜日、快晴。山田さんと昼。松竹の人達を交えて、風月堂でぜんざい。日野原先生の本を見つけると思わず買ってしまう。夜、整体院へ。
2017年10月6日 新聞掲載(第3209号)
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