安倍政権の(は?)これまで 政権交代で緑の古ダヌキが絶望のスッピン公開か|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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論潮
2017年10月11日

安倍政権の(は?)これまで 政権交代で緑の古ダヌキが絶望のスッピン公開か

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本日(九月二十八日)、衆議院が解散された。理由がない。国会冒頭解散は、議会不要と言うようなものだ。強行採決の連発同様、安倍首相は民意無視の“立法府の長”として一貫している。総選挙で与党が勝てば、禊が済んだとして、モリ・カケ疑惑はうやむやにされるだろう。  論壇誌上では、都議選自民惨敗の余波が続き、首相に批判的な論調が目立つ。論壇誌は月刊か季刊だから、ここ連日の政治の大変動は追えない。が、安倍政権のこれまでを振り返る絶好の機会を提供している。  
飯尾潤氏は、「民進党」が「体たらくを見せるなか、安倍首相が衆議院の解散総選挙に踏み切ったとしても、自民党が大敗するとは考えにくい」と、早期解散の可能性を八月脱稿時点で予見している(飯尾潤「安倍政権の課題と日本政治のゆくえ」『潮』十月号)。だが総選挙は「任期満了に近い時期が望ましい」。「政策を完成させ、その成果をもって総選挙に望むのが正道である」。仕事人内閣は無成果だ。目先の票読みによる邪道な保身解散である。
 
岩田明子氏によれば、「安保関連法」が一五年「七月に衆院を通過」し、内閣支持率が「三七%(NHK八月調査)」に落ち込むや、首相は「九月」に新三本の矢、つまり「一億総活躍」「介護離職ゼロ」「希望出生率一・八」といった「民主党(当時)のお株を奪うような社会福祉政策を並べ、民主党支持層の取り込みを図った」(岩田明子「安倍総理「驕りの証明」」『文藝春秋』十月号)。支持率は「四三%まで回復」し、この「体験が安倍の「驕り」へとつながっていく」。今回の解散も同じパターンだ。支持率が急落するや、消費増税の使途を教育・社会保障の充実に回す等々、甘言で迎合して乗り切ろうとする。驕りは続いている。


高橋伸彰氏によると、「一億総活躍」や「働き方改革」や「人づくり革命」など、安倍政権が「労働の供給面から成長戦略の推進を図ろうとしている背景」には、「そうしなければ景気の回復や拡大は早晩収束し、GDPの増加が止まってしまうという危機感がある」(高橋伸彰「アベノミクス「景気拡大」の死角」『世界』十月号)。「GDPの実績(需要量)から潜在GDP(生産力)を引いた数値」は「一六年度後半からプラスに転じている」。その場合「労働量が増えたり、生産性が上昇したりしなければGDPの持続的な成長は望めない」。「無理な残業やノルマ」で需要に応じるなら、「理不尽なサービス残業や過労死の悲劇」になる。首相が驕り始めた一五年冬に、高橋まつり氏は自殺した。首相は今も「月一〇〇時間未満」の「過労死ラインの残業を容認」している(小林蓮実「派遣法改悪、そして狙われる労基法」『紙の爆弾』十月号)。
 
数々のスローガンは、これまでの「新自由主義」の失政を認めたも同然だが(高橋氏)、首相は「懲りることなく」、「財界の声だけに耳を傾け雇う側の論理」に従う。「有効求人倍率」は「一・〇倍」を超え、「完全失業率」も「三%」を切ると首相は誇る。だが「人手不足」は「労働条件や雇用環境が厳しい分野が多く」、「一般事務」の有効求人倍率は「〇・三七倍」だ。「女性や高齢者の労働参加」を言いながら、彼らが求める仕事や働き方と「一致しない」。“無理な残業やノルマ”と同類だ。「アベノミクスに欠けているのは」、「労働者」が「人格を備えた人間であり、資本と同列に並べられる生産要素ではないという視点である」。人を人と思わない。スローガンは集票用の甘言で、大本営発表よろしく不都合な事実は隠される。
 
広岡裕児氏は新三本の矢を、「太平洋戦争で形勢不利になったとき、「全滅」ではなく美しく「玉砕」といったのとよく似ている」と評し、不都合な事実を暴く(広岡裕児「「成果」を印象操作 アベノミクスのまやかし」『紙の爆弾』)。GDPは「過去最高」と言うが、上昇率は(アベノミクス開始時の一二年度の計算法で)「目標の半分」だ。国際比較ではドルで見るが、換算すると一六年までの四年間で、GDPは「二割以上減少している」。雇用は「この二〇年で最高」と言うが、「増加の六割以上は非正規」だ。賃上げは「三年連続で二%以上」と言うが、数字は「正社員のもの」だ。非正規を含めた全体では、一〇年度を一〇〇として、一二年度が「九八・九」、一六年度が「九九・五」と「〇・六%の伸びでしかなく」「基準年を下回っている」。一五年の平均年収は、正規が「四八五万円」、非正規が「一七一万円」だ。人を人と思わない。

「預金」は「増えている」。「株価上昇」による「消費の伸びもなかった」。「信頼どころか将来への不安」の現われだ。「アベノミクスの基礎である正統資本主義」つまり新自由主義では、「企業にいくら利益が出ても株主への配当か、株価上昇のための投資に消えてしまう」。「トリクルダウン」も「ない」。少数者への富の集中と貧困者の量産が、アベノミクスの本性である。斎藤美奈子氏が言う通り、よほどの富裕層でもないかぎり「現政権を支持するのは、牛や豚が肉屋を支持しているようなもの」で、「オーウェルの『動物農場』と同じ」である(斎藤美奈子、大内裕和「「日常の戦争化」に抗する」『現代思想』四月号)。  

新自由主義は民主主義を、市場の自動調節機能の阻害要因と見る。議会は不要だ。「儲けるためならば何をしてもいい、挙句にそれを阻止するものがあれば水爆を落としてもいい」とも考える(宇沢弘文『人間の経済』)。新自由主義は軍事独裁と親和的だ。戦争は儲かる。
 
浅野健一氏は、第一次安倍政権での「教育基本法改悪を忘れてはならない」と指摘する(浅野健一「アベ政治翼賛で劣化する「大学」と「御用学者」」『紙の爆弾』)。基本法前文には「憲法の理想、理念の実現は教育によって行なう」とある。首相が「改悪」で「愛国心や「公共の精神」という規範」を盛り込み、教育は「民主主義よりナショナリズムを強化するように変わった」。憲法の理念は実現されない。「戦争体制づくり」のための「憲法に対するクーデター」だ。安倍晋三記念小学校は、教育勅語の洗脳装置だった。小林節氏も「憲法破壊」と首相を批判する(白田夏彦「小林節が語る 首相には理解できない「憲法の本質」」『紙の爆弾』)。
 
第二次安倍政権は「軍学協同を推進」し、「科学技術を軍事に応用する競争的資金制度をつくった」(浅野氏)。大学予算は削減の一途だが、競争的資金の「一七年度の予算は前年度比十八倍の一一〇億円に急増」だ。「日本学術会議」は今年三月、「科学者は軍事的な研究を行なわない」とした過去二回の声明を「継承する」との「新しい声明を決めた」。兵糧攻めと餌付けの両面作戦で、首相は大学を記念小的な翼賛軍産複合体にするが、「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と、声明は断固拒否する。


ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏も、「安倍政権に鉄槌を下し、危険な安倍さんには辞めてもらう」と檄を飛ばす(浅野健一「ノーベル賞・益川教授が語る「安倍政権は一線を超えた」」『創』十月号)。「安保法制」は「立憲主義」に「真っ向、敵対する」。「秘密保護法」は「何が秘密であるのか全く分からず、とても恐ろしい」。「文系学部はいらないとか、人文・社会科学はいらないなんて、バカなことを」。首相にとって、金儲けと軍事に“役立つ”学問以外は、議会と同じく不要だ。

園田耕司氏は「自民党の古典的文書「保守主義の政治哲学要綱」にもう一度立ち戻るべきだ」と主張する(園田耕司「保守政党よ、「中庸の精神」たれ」『世界』)。要綱は「六〇年」に「党の公式文書と承認され」、「中庸の精神」を「党の基本理念」に定めた。だが自民党は「〇九年」に「野党に転落する」と「新綱領」を発表した。立党時に「平和主義政党」「社会保障政策を強力に実施」と掲げたことを「みじんも感じさせない内容」で、「復古主義、国家主義的」になった。園田氏は「前原民進党を中心に野党再編で新しい「保守中道」勢力が結成され、自民党の「保守反動」路線と対立する構図が作り出される可能性」も予想する。
 
だが野党再編は、小池百合子氏の希望の党を中心に進められる。北野和希氏は、都民ファーストの会が民進党と異なり、自民党との「違いを薄め、有権者に投票先を変えても大丈夫なのだと安心感を与えようとした」ことを、都議選圧勝の一因に挙げる(北野和希「安倍政権を揺さぶった東京都議選」『世界』九月号)。民進の長期低迷を思えば、これが現実的な政権交代の方法かもしれない。小池旋風が衆院選でも吹き荒れたら、安倍政権はこれまでだ。
 
ただ、小池氏は厚化粧の劇場型政治で、“保守反動”の素顔を国民に隠している。安倍一強に劣らぬ都民ファの小池独裁を見よ。側近の特別秘書は大日本帝国主義者だ。中野晃一氏は「リベラルの組織化」が「課題」だと説く(中野晃一、中北浩爾「政党政治の底上げは可能か」『世界』十月号)。前原誠司氏は小池新党への事実上の合流に際して、民進の「名を捨てて実を取る」と熱弁した。実を取れない場合、緑の古ダヌキがスッピンをさらす。希望なき情報公開。政権交代にさして意味はなくなり、軍事独裁が近づく。

2017年10月6日 新聞掲載(第3209号)
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