連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(26)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年10月10日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(26)

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リスボンのシネマテークのロビーにて
JD 
 私は彼ら(ルネ・クレール、ジュリアン・デュヴィヴィエ、クロード・オータン=ララ)のような作家に反対しているわけではありません。結局のところ、彼らの映画には理由があり誤りもありました。この件に関しては、非常によくわかっていることがあります。つまり、デュヴィヴィエのような作家たちは良質な映画を作った。しかし良い・・作品を作っても、偉大な・・・作品は作らなかった。例えば、グレミヨンのような作家を考えると、同じようには考えられません。グレミヨンの作品には圧倒されます。彼の映画がフランスを体現しています。ルノワールも同様にフランスですし、ベッケルもフランスです。しかし、デュヴィヴィエに関しては、確かにフランスなのですが、それよりも、「フランスであるかもしれない」と言った方がいいですね。
HK 
 今挙がった作家の中では、誰が一番フランスを体現していると思いますか。
JD 
 それはルノワールです。彼はフランスを体現しながらも、さらに奥深くまで行くことができた作家です。ルノワールは映画を通じて19世紀終わりのフランスを考えていたのだと思います。つまり、革命とは何だったのかを考え、革命から何が生まれたのかを考えることができた唯一の作家です。第三共和制のフランスとは、彼の父親であるオーギュスト・ルノワールの時代です。だからこそ、彼にとって「自由、平等、友愛」という概念は身近なものでした。この概念はフランス革命における思いがけない発見です。しかしながら、重要視されるようになったのは第三共和制の時期でした。ルノワールの映画は、あくまでも「自由、平等、友愛」から出発しています。しかし同時に、ルノワールは、平等なしに自由はない、友愛なしに平等はないということもよく理解していました。このような考え方は全くもって革命的です。そして、もしルノワールの映画をよく見るならば、最も重要な主題とは自由だということがわかります。ルノワールのすべての映画は、自由を問題としています。自由を主題としているからこそ、平等も問題となります。しかし、所有という概念が作品の中に組み込まれると、平等という概念は必ずしも正確ではなくなります。所有とは平等のための概念ではありません。『素晴らしき放浪者』の本屋の主人を考えてみてください。彼は平等であろうとしますが、結局彼は、所有者でしかありません。セーヌ川に飛び込んだブーデュを救い出し、自宅に招き入れます。そして、結婚の生態研究の中に閉じ込めようとします。平等と所有についてのすべてが、ここで表現されています。言い換えるならば、結婚など、社会のすべてのシステムというものは、所有であるということです。平等であるためには、このような社会のシステムから解放されなければなりません。だからこそ、『素晴らしき放浪者』の最後に、ブーデュには自由になるための解決法は一つしか残されていません。すべてを投げ出すということです。

ルノワールのすべての映画は同じようにして自由を主題としているのですが、とりわけ『ゲームの規則』を見れば、その凄まじさが理解できると思います。『ゲームの規則』は、1939年のフランス社会のありようを見せた映画です。社会は確立されましたが、依然として金持ちによるものです。しかし、その社会は共和主義であるかのように振舞います。ラ・シュネイ侯爵は「自由、平等、友愛」のもとに、障壁のようなものを望もうとはしません。表面的には、皆が自由であり、城の中を闊歩しているようなものです。しかし気をつけなければならないのは、サロンは招待客たちだけのものであり、城内の目につかない場所は使用人たちのものであり続けているということです。平等というものが存在するにも関わらず、表面的なものでしかない。そして友愛について語られることはありません。『ゲームの規則』は、疑いようなく天才的な作品です。なぜならば、1939年の社会がどのようなものであったかのデモンストレーションであり、それに加えて、この作品が引き起こすことになる大惨事(第三共和制の政府から上映禁止処分を受ける等)を理解することなく一つの真理を描いてしまったからです。『ゲームの規則』で描かれたような社会とは、その当時のフランスの破滅でした。

〈次号へつづく〉
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕
2017年10月6日 新聞掲載(第3209号)
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