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八重山暮らし
2017年10月17日

八重山暮らし⑬

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小浜島の結願祭。祭場へと静かに歩むメーラク(弥勒神)。
(撮影=大森一也)
果報の島へ


八重山に暮らし、祭祀を訪ねての小さな旅を繰り返してきた。とりわけ足繁く通ったのは「カフ(果報)ぬ島」と呼ばれる小浜島だ。

小浜の島人は語る。
「この島には、ささやかながら山があり、ささやかながら清らかな川がある。獲物であふれるサンゴ礁の海がある。実り多き豊かなカフぬ島にいるんです」

周囲が16キロあまりの島には、人が飢えることなく生き延びるために必要なものが集約されている。
「旅からの人は服でわかるさぁ。小浜のおとこたちのクンズンを見てごらん」

島最大の行事、結願祭で幾度も耳にした。祭場を彩る紺地の着物「クンズン」。焦げるような深い藍染めの衣装に島人の美意識が、くっきりと貫かれている。

クンズンだけではない。軽快に舞う青年の仄かに黄味を帯びた芭蕉の着物。白地に細い縦縞が愛らしい、子どもたちの衣装。どれも島のおんなたちが家族のために製織したものだ。小浜の家の箪笥には、はちきれんばかりに着物が納めてあるという。ならば、なぜそれを生業としないのか。常日ごろの疑問を口にした。
「織り仕事で商売? 考えたこともありませんね」

みなが一様に答える。
「ここはカフぬ島だから。何でもあって、ゆっくり生きられるから…」と。

小さな島の大きな充足感に胸を突かれた。

2017年10月13日 新聞掲載(第3210号)
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