連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(27)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年10月17日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(27)

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カッパドギアにて(1960年代)
HK 
 ルノワールの映画のシステムはどのようにして機能しているのでしょうか。物語からの分析ではなく、映画のシステムとしてどうなっているのか。シナリオだけではなく、モンタージュ、ショット等の映画を形作る要素すべて、言ってしまえば「演出」についての質問です。
JD 
 演出とは「動き」です。これはルノワールに限ったことではないので、、再度偉大な映画というものについて話をしましょう。偉大な映画とは「生」です。「生」とは「動き」です。このことに関しては確かに十分に話をしていませんでしたね。世界とは動きです。世界の中では全てが動きです。動きしかありません。この世界(=宇宙)の始まり、つまりビッグバンとは、動きでした。全てが動きなのです。しかし権力を欲する社会は――おおよその場合社会は権力と符合します――「動き」を拒否します。そして不変性を要求します。例えば宗教を例に考えてみてください。日本や東洋の宗教のように、他の宗教よりも自由なものではなく、イスラム教やキリスト教のような宗教では、唯一の神がいます。神が絶対です。そして、そこから延長するようにして規則を作ります。モーゼの石の板(十戒が記された特殊な板)を考えてみても、一つ目の戒律が定められ、二つ目の戒律があり三つ目があり、とにかく戒律ありきでした。別の言い方をすると、不変性とは、信仰であり、そして従順することを欲する社会を打ちたてることです。世界に対する欺きです。世界のすべては動きであると言いましょう。だからこそ、あるものが自然であるが別のものは自然ではないと言うことはできません。自然においては全てがそこに存在しているのですから。全てが可能なのです。つまり、もし世界というものを根本的に理解するならば、不変性もしくは不動性のようなものは受け入れ難いはずです。全てが動きなのですから。映画とは「動き」です。
HK 
 この「動き」という考えは、ドゥーシェさんが映画について話をするときによく出て来ます。例えばグレミヨンの『この空は君のもの』を話すときにも、非常に似た話をしますよね。作品の始まりの落下するピアノ、道路を走り回る車、地上を駆け回る人々、そして自由に空を飛び回る飛行機。純粋な映画としての動きだけでも並はずれたものである。それに加えて、物語としても自由を問題とした作品である。飛行機への情熱によって突き動かされた夫婦が家財道具を売り払ってでも自由を求めるのに対して、その母親はそれまでの生活に固執して不変なままであろうとする。この背景には当時のレジスタンスとペタン政権が反映されてもいる。僕の理解ではこのような感じです。
JD 
 まさしくその通りです。『この空は君のもの』は見事だとしか言いようのない作品です。私にとっては、占領下のフランスにおける最も美しい作品です。グレミヨンという作家は、作れたであろう作品を作る機会に恵まれなかった作家です。もし機会に恵まれていれば、映画史に名を残す重要な作品をもっと残せていたはずです。

グレミヨンは、私にとってその時代のフランス映画の、ルノワールに次いで、最も重要な作家です。ルノワールは当たり前のように重要ですね。そして、ジャン・ヴィゴです。しかし、世間で思われているほどには、もうヴィゴには熱中していません。もしヴィゴがもっと長く生きていたならば、確かに本当に重要な大作家となっていたでしょう。これは明白です。そして、ベッケルは非常に良い。彼は偉大な良い作家と偉大な作家の間にいたと思います。それでも偉大な方へと寄った位置にいます。そしてヌーヴェルヴァーグが現れました。ムッシュ・ユロつまりジャック・タチも同じ時代にいましたね。確かに素晴らしい作家でした。もう一人、この作家は出自こそフランスではないのですが、非常にフランス的ないい作品を作っていました。マックス・オフュルスです。『たそがれの女心』は非常に愛らしい作品です。理由なしに『たそがれの女心』がまったくもってフランス的であると言うのではありません。見るだけでフランスが感じられます。このような映画は日本では作れないでしょうし、アメリカでもドイツでもイギリスでもつくれません。フランスの映画です。

〈次号へつづく〉
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕

2017年10月13日 新聞掲載(第3210号)
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