蛍川・泥の河 / 宮本 輝(新潮文庫)蛍の輝きと、命の輝き 第78回芥川賞受賞 宮本輝著「蛍川」(1977年)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
2017年10月13日

蛍の輝きと、命の輝き
第78回芥川賞受賞 宮本輝著「蛍川」(1977年)

蛍川・泥の河
著 者:宮本 輝
出版社:新潮文庫
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蛍川・泥の河(宮本 輝)新潮文庫
蛍川・泥の河
宮本 輝
新潮文庫
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『文芸展望』(1977年10月号)に掲載された 第78回(昭和52年下半期)芥川賞受賞作品。

この本を読んだきっかけは、夏休みに芥川賞はどのようなものなのかを国語の資料集で調べていた時に、この本が紹介されていたからだ。宮本輝という作家も母から聞いて気になっていた。資料集を読んで興味深かったのは、文学の時代の流れだった。プロレタリア文学から始まり、戦争文学、太宰治などの新戯作家、戦後派、安岡章太郎などの第三の新人……。時代の流れと文学の流れは同じように進んでいた。戦争の時代は、戦争の話。戦争が終わり、自由になっていくと、物語のジャンルが広がっていく。このとき初めて私は文学についての歴史を知り、新しい読書の面白さを知った。そう思うと確かに芥川賞も時代の背景がとても濃くでている。この先は、どんな文学が待っているのだろうか。

この『蛍川』は、昭和37年の北陸、富山が舞台の春から夏までの青年竜夫の物語である。竜夫は私と同じ中学二年生だが、明るい青春の物語ではなく、父の死、友人の事故と重く苦しい。しかし、この暗い青春の日常を描いたなかにも初恋という少しのときめきもある。

初恋は私とはかけ離れている。学校の周りの子たちは彼氏、好きな人もいて、“女子”という感じがする。私の場合、好きな人ができたこともないし、恋バナもしない。少女漫画やドラマで見る恋には憧れるけれど、実際にはドラマティックな出来事もないし、ただ好きな人ができるのを待っている。今の子のほとんどがスマホを持っているので、LINEで告白して、LINEで別れて、気軽に付き合うことができる。だから付き合ってすぐ別れて、またすぐ付き合うことが多い。

私にはそれが遊びのようにも見えて恋のような感じはしない。『蛍川』のように好きな子の写真を盗んだり、勇気を出して遊びに誘ったり、学校で話をしたり、直接的な昔の恋のほうが“恋”という感じがする。

最後、主人公は好きな女の子と一緒に蛍を見に行く。読者のみんなは蛍を見たことがあるだろうか。私は自分の目で蛍を見たことがない。この蛍川の舞台となっている川は富山市のいたち川。今でも蛍がきれいにみられるようだ。

小説の中の蛍は、青年が見た父と友人の死を映しだしている。

「蛍の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、大空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞い上がっていった」

少し難しい表現もあるが、死と生を深く考えさせられる描写である。

蛍の輝きと、命の輝き、青年の初恋、季節の移ろい。そして、思春期の光と影。私たちの青春に大事なものを感じた。


【おまけ】
「旅行先の川。蛍いないかなー」
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著 者:宮本 輝
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