創刊65周年『明星』連載文芸作品をよむ 第3回 富島健夫『君たちがいて僕がいた』|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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創刊65周年『明星』連載文芸作品をよむ
2017年10月24日

創刊65周年『明星』連載文芸作品をよむ
第3回 富島健夫『君たちがいて僕がいた』

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前回は、一九五〇年代『明星』における性愛を扱った記事を背景とする、三島由紀夫の連載を紹介した。

一九六一年十月号から一九六二年三月号まで連載された三谷茉沙夫『愛の旅路』に続く「教師と女生徒の愛のシリーズ」として、翌四月号から同年七月号まで瀬戸内晴美『愛の終わりから』が連載された。同シリーズの続く作品として、富島健夫『夢の中の星』が、翌八月号から同年十一月号まで連載された。

このあと富島は、『明星』で連載小説七作品を発表する(読み切り連載一作品を含む)。これらのなかで最も知られているのは、一九六四年四月号から同年六月号まで連載された、『君たちがいて僕がいた』であろう。この作品は同年、東映で映画化された。主演は舟木一夫・本間千代子で、監督は鷹森立一である。

富島もまた、『平凡』には寄稿していない作家である(本年刊行された富島の初の本格的評伝である、荒川佳洋『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』[河出書房新社]巻末の「富島健夫年譜」によると、『週刊平凡』『平凡パンチ』には連載を持っていた)。

大橋崇行の研究などを踏まえた嵯峨景子の整理を参照すると、一九五〇年代後半以降、『女学生の友』(小学館、一九五〇年創刊)を中心に「少女小説」に替わる名称として「ジュニア小説」という呼称が出現した。そして一九六六年三月の『小説ジュニア』(集英社)春号創刊を契機に、「ジュニア小説」がジャンルとして定着する。この創刊号の巻頭を飾ったのは、富島『制服の胸のここには』である(『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』[彩流社])。荒川も先の著書で、『制服の胸のここには』がジュニア小説ブームの火付け役だとしている。

同誌の創刊について、『集英社70年の歴史』をひもときたい。一九六二年十一月、『女性明星』が、「結婚適齢期のミスとヤングミセスのための生活誌」として創刊された。同誌は、一九六五年七月から読者対象をハイティーンに落とし、さまざまな試みを重ねる。そのなかで、付録につけた文庫判の青春小説集が好評であったため、ジュニアに向けた青春小説雑誌の発想が生まれた。そこから、『小説ジュニア』創刊にいたった。

一九六五年五月には、シリーズ「コバルト・ブックス」が発刊された。『制服の胸のここには』も、ここから刊行されている。嵯峨によると、特に初期コバルト・ブックスのラインナップには『女学生の友』掲載作品の収録が多く、ジュニア小説の源流が『女学生の友』のなかにあることがうかがえるという。

一九六六年六月には、女性明星編集部が廃されるとともに、明星編集部に『小説ジュニア』編集が新設された。この月に刊行された七月号で『女性明星』は終刊する。

一九七六年五月には、「集英社文庫」(コバルトシリーズ)が発刊された。第一回配本は、『制服の胸のここには』など十一点である。

一九八二年五月に『小説ジュニア』は六月号で終刊した。誌名を改題した『COBALT』夏号が、七月に創刊された。

以上より、一ツ橋グループ(小学館・集英社)の雑誌から「ジュニア小説」が生まれたことがまず見えてこよう。その雑誌のなかでも「ジュニア小説」を定着させたのが『小説ジュニア』であり、この過程における重要な存在が富島であった。また同誌の編集は創刊からしばらくは明星編集部のなかでおこなわれていた。これらと、富島の計八回にもわたる連載小説掲載を関係づけられよう。

ここまで本連載では、第一回では、ラジオ・映画との関係性から『明星』連載小説に光をあてた。第二回では、一九五〇年代当時の『平凡』『明星』の他の記事との関係性から『明星』連載エッセイをとらえた。第三回では、一ツ橋グループの雑誌をはじめとする出版活動との関係性から『明星』連載小説の位置を考えた。今回扱えなかったことがらについては、他日を期したい。(文中敬称略)
この記事の中でご紹介した本
「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝/河出書房新社
「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝
著 者:荒川 佳洋
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年10月20日 新聞掲載(第3211号)
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