30年を経て大幅に改訂 新しい植物分類体系をもとに  『改訂新版 日本の野生植物』(平凡社)完結|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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出版メモ
2017年10月24日

30年を経て大幅に改訂 新しい植物分類体系をもとに 
『改訂新版 日本の野生植物』(平凡社)完結

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植物の系統分類体系は、これまでエングラー体系やクロンキスト体系と呼ばれる、植物の形態をもとにしたものが用いられてきたが、1998年、葉緑体のDNA解析による全く新しい被子植物の系統分類体系が登場し、主に学術分野では現在この体系が用いられるようになっている。この分類体系がAPG体系と呼ばれるものである。


日本の標準植物誌として高く評価され、今日も広く利用されている『日本の野生植物 草本』(1982年)と『同 木本』(1989年)が平凡社より刊行されてからおよそ30年を経て、この新しい分類体系であるAPG体系Ⅲ・Ⅳを採用し、「草本」「木本」の区別を排し、旧版の解説も活かしつつ、大幅な改訂・増補を行ない、約四四〇〇項目、六八〇〇の植物を記述した、『改訂新版 日本の野生植物』(全5巻+総索引【別冊】)が刊行され、このほど完結した。

この改訂新版の刊行について、平凡社編集部の大石範子氏と福田祐介氏は「やはりAPGという新しい分類が確定してきて、すべての科が変わったわけではありませんが、ドラスティックに変わったものや新しい科になったものがあります。これは国際的に認められてきていて分類学としては絶対に避けて通れない部分ですので、タイミングとしてはちょうど良かったんです。この図鑑では、なぜそのように変わったのかは、それぞれの科の頭にきちんと書いてあります。またこの分類に沿った大型図鑑は国内では初めてのものであると同時に決定版ではないかと思っています」と自信を覗かせる。


この改訂新版の特徴は、かつて「草本」と「木本」に分かれていたものを一つにまとめ、APG体系を用いているということだけではない。図鑑には必須の写真も、旧版のものを利用するのではなく、ほぼすべて新しいもの(各巻ごとおよそ二千点)が使われている。


「写真がきちんと乗っている図鑑としては東アジアの植物図鑑としてはこれが最先端のものだと思います。とはいえ写真だけでは意外に情報量が少ないんですね。ですから葉に毛があるのかとか、複葉が何枚なのか、あるいは花柄の長さが何ミリなのかといったことなどを調べるには、それぞれの植物の特徴などを一般化して標準的なことを書いた検索表を読むほうが確かではあります。また、分類体系が変わったことによって科が変わったものについては、旧版で用いられていた分類体系ではどの科に属していたのかを明示して、旧版の読者や以前の分類体系で勉強された方も戸惑わないように工夫しています」。

この図鑑のさらなる特徴であり、利用者に極めて親切かつ有用なのは別冊の総索引である。旧版では「草本」(全三巻)「木本」(全二巻)と分かれており、かつ索引は別冊ではなくそれぞれの巻の第一巻に掲載されていたため、検索に関しては不便な側面もあった。だが今回は別冊の総索引を引くことにより、目的のものが何巻に掲載されているのかがすぐ分かるようになったので、調べたい植物が何科であるかが分からなかったとしてもすぐにどこに載っているのかを知ることが出来る。また、総索引の利便性はそれだけではないという。


「学名は変わることも多いので、索引では旧版の学名で引いても出来る限り該当箇所に行き着けるようにしています。学名というのは本来一対一対応でなければいけないのですが、新種の登録によって学名の本体が変わることもありますし、シノニム(異名)がいくつもある場合もあります。著者の方たちには意味のあるシノニムについてはなるべく記載していただくようお願いしていますので、総索引ではシノニムからも検索できるようになっています。これによって旧版の愛用者の方や、旧分類体系に慣れ親しんでいる方、そして異名で調べようとする方なども、目当ての項目に辿り着くことが出来るだろうと思っています」。

今回大幅改訂がなされたこの『日本の野生植物』は、研究者や専門家および図書館には必携の図鑑であることは間違いないが、書店での売れ行きも好調で、植物愛好家からの需要も多いという。これは旧版が長く愛されてきたうえで、その実績のもと、新しい知見が導入された図鑑が待ち望まれていたことの証なのであろう。


◇『改訂新版 日本の野生植物』(全五巻+総索引【別冊】)
(1)ソテツ科~カヤツリグサ科
(二四〇〇〇円・978―4―582―53531―0)
(2)イネ科~イラクサ科
(二二〇〇〇円・978―4―582―53532―7)
(3)バラ科~センダン科
(二二〇〇〇円・978―4―582―53533―4)
(4)アオイ科~キョウチクトウ科
(二二〇〇〇円・978―4―582―53534―1)
(5)ヒルガオ科~スイカズラ科+総索引(分売不可)
(二四〇〇〇円・978―4―582―53535―8)
四六倍判・平均六〇〇頁・平凡社

この記事の中でご紹介した本
改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科/平凡社
改訂新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科
著 者:大橋 広好、門田 裕一、邑田 仁、米倉 浩司、木原 浩
出版社:平凡社
以下のオンライン書店でご購入できます
改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科~イラクサ科/平凡社
改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科~イラクサ科
著 者:大橋 広好、門田 裕一、邑田 仁、米倉 浩司、木原 浩
出版社:平凡社
以下のオンライン書店でご購入できます
改訂新版 日本の野生植物 3 バラ科~センダン科/平凡社
改訂新版 日本の野生植物 3 バラ科~センダン科
著 者:大橋 広好、門田 裕一、邑田 仁、米倉 浩司、木原 浩
出版社:平凡社
以下のオンライン書店でご購入できます
改訂新版 日本の野生植物 4 アオイ科~キョウチクトウ科/平凡社
改訂新版 日本の野生植物 4 アオイ科~キョウチクトウ科
著 者:大橋 広好、門田 裕一、邑田 仁、米倉 浩司、木原 浩
出版社:平凡社
以下のオンライン書店でご購入できます
改訂新版 日本の野生植物  ヒルガオ科~スイカズラ科/平凡社
改訂新版 日本の野生植物 ヒルガオ科~スイカズラ科
著 者:大橋 広好、門田 裕一、邑田 仁、米倉 浩司、木原 浩
出版社:平凡社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年10月20日 新聞掲載(第3211号)
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