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八重山暮らし
2017年10月24日

八重山暮らし⑭

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竹富島の種子取祭では奉納芸能が二日間にわたり繰り広げられる。
(撮影=大森一也)
タナドゥイに沸く日


小さな島が沈むのではないか。時は立冬。なのに真夏のごとく鋭い陽射し。祭場を埋める人の熱気…。竹富島に縁ある人びとが海を渡り一堂に会す。タナドゥイ(種子取祭)は六百年の歴史を有するという。すこぶる壮観な祭祀儀礼だ。

ユークイ明け、とうとう一睡もできなかった。立っているのもやっとだ。が、島人の歌声はどうだ。疲れを微塵も感じさせない。

夜を徹してのユークイ(世乞い)行事。祭りは最高潮となる。一晩をかけて島中の家を巡り、豊饒の世、子孫繁栄を祈願する。銅鑼の音、「道歌」の大合唱が響き渡る。島を丸ごと清めるように。行列の客には酢漬けニンニクとタコの和え物が振る舞われる。
「どんなに痩せた土地でも根付くニンニク、8本の足を持つタコは、つよい繁栄をあらわすさぁ。昔から、ニンニクとタコだけは、どこの家にもあるから。いつでも、旅から来た人に御馳走できますからねぇ」

年かさのおんなが安堵の笑みをうかべる。台風や干ばつによる飢饉にあえいでいても、来客へのもてなしを島では何より大事な務めとしてきた。昨夜は、一年分のニンニクを食したにちがいない。

祭場では、いよいよ奉納芸能が始まる。居並ぶ背筋がきりりと張りつむのがわかる。昂揚のどよめきが、島をうねっていった。

2017年10月20日 新聞掲載(第3211号)
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