連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(28)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年10月24日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(28)

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左からドゥーシェ、古賀太、久保の三氏(9月パリにて)

HK 
 これから先、しばらくの間「食と映画」をテーマに話をしていきたいと思います。このような少し変わった質問をするのには理由があります。第一にドゥーシェさんは映画の世界では有名な食通です。フランスの映画関係者でも、「ジャン・ドゥーシェから映画は教わらなかったが食だけは学んだ」と冗談交じりで言う人がいるくらい各所で知られています。

それに続いて、少し個人的な考えなのですが、映画というものを見ていると印象的なシーンと「食」が絡んでいることが多いような気がします。例えば、フランスではルノワールの作品やシャブロルの作品が思い出されます。でも、ゴダールやトリュフォーはあまり関係がありませんね。イタリア映画は非常によく「食」と関わっていたのではないでしょうか。日本映画も小津安二郎など、「食」を忘れてはならない作品がありました。中華圏の映画でも胡金銓から侯孝賢まで、いつも「食」が、その作品のどこかに映り込んでいたはずです。アメリカ映画も、ある意味では「食」と結びついていたところがあると思います。
JD 
 私の考えでは、映画における「食」の表象とは、当たり前のように、各々の映画作家と「食」の関わりを表しているのだと思います。「食」表現が映画の中に見て取れるということは、非常に重要なことです。もしあるキャラクターを、つまり映画の中で生きる・・・存在を撮影しようとするならば、食事や睡眠など――睡眠のようなことはもっと考えられてみてもいいはずです――生活の一部をなす行為を重要視するのは当然のことです。つまり「生」を「生」として形作る要素について向き合うということですから。

そうは言っても、今ここで述べたことは、必ずしも正確ではないはずです。多くの人々にとって、例えば睡眠は、さほど重要な出来事ではありません。多くの映画作家にとっても、睡眠はあまり重要なことではありません。寝入るところを見せ、睡眠を喚起させるだけです。「食」に関しても同じことが言えます。なぜならば、食事という行為は、実際にはそれ自体が何かを物語るものではないからです。重要な行為(衝突など)が食事の場で起きるのは非常に珍しいことです。時にはそのようなアクション(=行為)が起きることも確かにありはします。

映画の中で「食」を取り上げるためにはいくつもの方法があります。例えば、一つの食事を、その場で発生している暴力的な衝突のために取り上げることができます。ドラマを引き起こすためのきっかけとしての「食」ということです。このような映画を見ると、直ちにアクションの真っ只中にいるということがわかります。もしくは、テーブルの周りに集う人々を撮影することも考えられます。つまり、娯楽としての食事から喜びを感じている人々を見せるということです。「食」による快楽を見せるということは、より難しいことです。理由はそれほど複雑ではなく、観客にとってあまり興味深いテーマではないからです。そして、特定の映画作家にとっても、「食」自体を見せることはそれほど興味深いものではないからです。

「食」という観点から史劇の映画を見るのはとても面白いことです。そのようなジャンルにおいては、非常によく食事というものが喚起されます。なぜならば、テーブルを中心とした慣習が存在していたからです。日本や中国、フランスといった世界中の国で、同様のことが言えるはずです。これは事実です。しかし、西洋社会に関して言うならば、テーブルに集まり食事を楽しむ人々を見せるのは、少しわずらわしいことではないかと思います。非常に単純で当たり前の理由ですが、映画を観に行く人々は、つまり作品の中の登場人物ではない人々は、食べることができません。「食と映画」という問題はこれほど単純なことなのです。 <次号へつづく>

〔聞き手=久保宏樹〕

2017年10月20日 新聞掲載(第3211号)
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