伊舎堂仁『トントングラム』(2014) 第三次世界大戦終戦後懇親会に御出席します 御欠席|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2017年10月31日

第三次世界大戦終戦後懇親会に御出席します 御欠席
伊舎堂仁『トントングラム』(2014)

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斉藤斎藤にも負けない次世代のパロディ短歌の名手としては、伊舎堂仁があげられる。定型文をひねって隠されていた世界を暴く手つきは、まるで裏稼業を請け負う鍵師のように鮮やかで正確だ。

伊舎堂仁に引用やパロディを駆使した歌はたくさんあるが、その中でもひときわ言及されることが多いのがこの掲出歌。短歌の中に二重取り消し線が導入されているという珍しい歌だ。二重取り消し線が引かれている部分は声に出して読まない。そうするとちゃんと五七五七七になる。つまり文字の上では五七五七七より多い情報が読者に与えられているということになる。そんなのありなのかと思う方もおられるかもしれないが、短歌では余裕でありである。

パーティーや結婚式などの出席可否の往復はがきの文体を下敷きにしながら、これから訪れるかもしれない未来の戦争を詠んでいるという社会派な点が、何かと言及されやすい理由だろう。つまり、日本人の国民性を風刺した歌なのだ。第三次世界大戦が起こった後にも日本人は相変わらず、「御」に線を引いていちいち取り消すようなみみっちいマナーに汲々としているのだろう。いや、マナーと称された型通りのお約束を繰り返すことくらいしかできないから、第三次世界大戦に巻き込まれてしまったのではないか。どこまでも思考停止の日本人気質をブラックな笑いに包んで表現してみせた一首だ。星新一も顔負けの本当のショートショートSF、かもしれない。

この記事の中でご紹介した本
トントングラム/書肆侃侃房
トントングラム
著 者:伊舎堂 仁
出版社:書肆侃侃房
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年10月27日 新聞掲載(第3212号)
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