組織コミュニケーションコンサルタント・寺田由美さん(下)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年10月31日

組織コミュニケーションコンサルタント・寺田由美さん(下)

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寺田由美さんは自ら会社を立ち上げ、組織を活性化するためのセミナーや研修会を積極的に行っているが、「これでよかったんだ」と思えるようになるには、長い時間が必要だったという。「正社員でいたのは、銀行時代の数年だけ。あとはアルバイトや派遣、業務委託の形態で、なぜ自分は正社員になれないんだろうと、負い目に感じたこともありました」

そんなときに、あるキャリア理論に触れて、「初めて、これでよかったんだ、と思えました」。それは“プランド・ハップスタンス”(計画された偶発性)と呼ばれる、アメリカのクランボルツ教授が唱えた理論。「自分のキャリアは予期せぬ偶然によるところが大きく、好奇心や持続性、楽観性、柔軟性、冒険心を磨いておけば、物事はいいほうに回っていく」ということがわかりやすく説かれている。怖いもの知らずで「とにかくやってみる」というのが自分の強みだと気づいた、という。

その後、IT企業に入り、課長、部長、執行役員とキャリアを積む。が、なにか新しいこと、面白そうなことがあると、すぐにそちらに向かうのが寺田さんの強みなのだろう。その時期にまた新しいことに出会う。それがその後の仕事の柱となる、“コーチング”という技法だった。
寺田さんが中心になり開催しているセミナーや講習会
 “コーチング”というものがよくわからない私に、寺田さんはこう説明してくれた。「コーチングは人材開発の技法のひとつで、コミュニケーションを取りながら、相手から持っているものを引き出すんです。相手が何をしたいのか。そこに至るまでにどう関係性を作っていくのか、信頼の土壌を作るのがコーチとしていちばん大事な仕事」と寺田さん。答えを示すのではなく、自分で行動するお手伝いをする。企業の中のチームやグループを活性化することもコーチングの一つで、この技法を学び、資格をとるために、かなりの金額の自己投資もした。この出会いで、IT企業を辞め、コーチングの業界に転職した寺田さんだが、ここで転職した会社が立ち行かなくなるという経験をする。

今まで仕事をくださっていた会社に挨拶に行くと「あなたにコーチングの仕事を頼んでいたんですよ。あなたの会社に頼んでいたわけではない。あなたが会社を立ち上げればいい」

数社からあたたかい応援の手を差し伸べられて、二〇〇七年三月に退社。四月二十五日には、HRリスペクト株式会社を設立する。「HRってなんの略ですか?」と聞くと“ヒューマンリソース”(人的資源)のことだという。“本来人が持っている様々なものを大切にする”会社という意味だろうか。

その会社は、最初の一年は売り上げが立たない月もあり苦戦したが、翌年のリーマンショックも何とか切り抜け、現在に至っている。

社団法人コーチングプラットフォームも二〇一四年に設立した。これはコーチを仕事にしたいが、どこで学んでいいかわからない人たちにノウハウを提供し、将来のコーチングスタッフを育てたいという思いで立ち上げた団体だという。

「私自身が長い暗黒の時代を経験し、さまざまな面でどうしてこんなに差があるんだろうと思いながら仕事を続けてきました。アルバイトも派遣も業務委託も経験したからこそ、いろいろな働き方をしている人たちに寄り添って、一緒に考えていけることが、今何よりの財産になっています」
“無駄なことは何一つなかった。”寺田さんは何度もこの言葉を繰り返す。

これからの夢を聞いてみた。「組織の中にいる時間を、生き生きとした輝くものにするお手伝いがしたい。と同時にそういうことができるコーチを養成して、学びを広めてもらい、楽しいおとな、やりがいを持っているおとながたくさん生まれたらいいと願っているんです。子供たちから見ても、“あんなおとなになりたい”と思ってもらえるような。それには、まずは小さな一歩から。小さな一歩を踏み出して、しっかり次につなげる会社や団体でありたい」

このところ、「女性活躍推進法」や「働き方改革」に関するファシリテーターの仕事も増えているという寺田さん。これからも好奇心いっぱいに、軽やかにしなやかに、多くの人たちを元気にしていくに違いない。(おわり)

2017年10月27日 新聞掲載(第3212号)
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