連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(29)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
2017年10月31日

連 載 映画/映画作家/映画批評 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く(29)

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画面奥左にドゥーシェ。(シャブロルと共に)
JD 
 「食」と映画は密接に結びついたものである。このような考えからすると、映画作家に課された問題とは、作品の中で登場人物たちが享受している「食」が、つまり作品の中で表現される食事が、その映画作品として面白いものとして作られなければいけないということです。このことに少し関連しますが、一部の映画作家たちにとっては、彼らの私生活の中で、食というものは二次的なことでしかありませんでした。食べなければいけないから食べる。しかし、楽しみのために食べるということはない。あっという間に食べてしまい、どんなものでも食べる。まさにトリュフォーやゴダールのような作家たちの作品の中には、食事が出てくることはほとんどありません。なぜか。それは彼ら自身が、まともに食事に行くということがなかったからです。だから彼らの映画を見るときには、「食」という観点から見ることはできません。以前ゴダールやトリュフォーの映画の中に、食事のシーンを探したことがあったのですが…
HK 
 そうは言っても、昔はゴダールと食事に行っていたのではないですか。
JD 
 そういうことではありません。個人的な食事には一緒に行っていません。今私が言葉を探していたのは、彼らの映画作品についてです。結局のところ彼らは、映画の中で食事を見せることに興味がありませんでした。というのも、彼らは人生を彩る「食」という出来事には興味がなかったのであり、食事に魅了されるキャラクターを考えることがなかったからです。

反対に、実生活で食に魅了されていた、シャブロルのような映画作家は、作品の中にも食事の光景を入れ込むことを楽しんでいました。彼の映画の中で、最も暴力的な表現の一つが、食事の場で行われていました。『野獣死すべし』という作品があります。1969年の作品でありながらも、その後の1980年代以降の作品に匹敵するだけの力を持った作品です。
HK 
 僕にとってはシャブロルはヌーヴェルヴァーグの時代の作家というよりも、80年代以降の作家です。その時代にシャブロルの演出が完成されたのではないでしょうか。シャブロルについて何か理解したいと思ったのは、『甘い罠』や『沈黙の女』を見た時です。シャブロルの映画では、いつもありえるかもしれない状況が提示されます。でも、実生活の中でありえるかもしれない何か小さな疑惑のようなものがあります。そしてその疑惑が亀裂となるまで膨らましていく。
JD 
 その通りですね。私が話そうとしている『野獣死すべし』も似通った作品です。この作品を見る上でとても興味深いのは、食事と自動車事故の両立です。ジャン・ヤンヌは非常に嫌な役を演じています。作品の冒頭で自動車事故を起こし、主役である推理作家の息子を殺します。この推理作家は加害者を探すことになります。なぜならば、加害者は何も残すことなく逃げてしまったからです。作品の終わりに、推理作家は犯人を突き止めます。そして、加害者を昼食に招きます。この昼食への招待は、息子を殺されたことに対する恨みによる悪意そのものです。同時に、提供される料理そのものにも駆け引きが見られます。料理が十分に焼けていなかったりと、様々な演出が見られる非常に面白いシーンです。食事と関連するドラマの見本といってもいいくらいです。この映画だけでなく、シャブロルは食の場における人々を見るということに長けていました。他の映画作家たちと違い、シャブロルの作品における食事の表現がおもしろいのは、彼自身が「食」を好きであったということに尽きると思います。食事が映画と一体となっているのは非常に興味深いことです。現実において、ある人々にとって「食」は、人生の重要な一部をなしています。だからこそ、食事の中に潜んでいるドラマ的可能性を忘れていいということはありません。そうした意味で、シャブロルの映画は非常に興味深いものです。

<次号へつづく>
〔聞き手=久保宏樹/写真提供:シネマテーク・ブルゴーニュ〕

2017年10月27日 新聞掲載(第3212号)
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