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八重山暮らし
2017年10月28日

八重山暮らし⑮

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石垣島ではオープンカーで集落を巡る。石垣市平得にて。

(撮影=大森一也)
カジマヤー


数えで97歳の生年祝いを「カジマヤー」という。それは沖縄の言葉で風車を意味する。人は再び童心に戻っていく。風車を手にする幼い子のように。沿道の人びとが風車を握りしめて祝いの行列を寿ぐ。おとぎ話みたいな光景がゆるやかに広がる。

この島では高齢者を「先輩」と呼ぶ。その清しさ。にわか島暮らしにまごつく日々、とまどいを見透かされては、たしなめられた。
「まずは先輩にならいなさい」と。
この島では老人を弱者と見なさない。昔からのまっとうな暮らしぶりを示す先達だからだ。祖父母を敬う親に育てられ、その子どもらも成人してなお「先輩」を真っ直ぐに慕う。多事多端な世にも動じず、我が道を淡々と生きる人びとは、若いやわらかな心の拠り所となりうる。

受け継がれた精神風土が、長寿を地域の悦びとして共有する希有の島をつくりあげていった。

鮮やかな紅型の着物を纏う女性は、南国の陽の光そのもののようだ。傍らではしゃぐ曾孫にあどけない微笑みを返している。その長寿に是非とも「あやかりたい」人びとが我先に手を伸ばす。皺の刻まれた小さな手の甲を包む。赤ん坊をあやすようにやさしく撫で続ける…。

アジアへと続く八重山のつつましやかな幸せに立ち会う日々。島のカジマヤーこそ、唯一無二の生きている証にちがいない。

2017年10月27日 新聞掲載(第3212号)
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