木村拓哉という生き方 / 太田 省一(青弓社)木村拓哉という存在を通じて見えてくる時代|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年11月7日

木村拓哉という存在を通じて見えてくる時代

木村拓哉という生き方
著 者:太田 省一
出版社:青弓社
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元々アイドルが好きで、いつの頃からかアイドルについて文章も書くようになった。「オタク」と呼ばれる人全般がそうかもしれないが、アイドルオタクも得てして語りたがりである。だからただ応援するだけでなく、分析したり評論したりするようになったところでそれほど不思議な話ではない。

ただ、ジャニーズについて書くようになるとは、正直予想していなかった。もちろん昔からジャニーズ好きでもあったのだが、これほどいろいろと書く機会に恵まれるとは思っていなかった。今回の『木村拓哉という生き方』も、そんな幸運から生まれた一冊である。

いつの時代にもスターと呼ばれる存在はいる。だが現代はスター不在とも言われる。そんな一見相反する時代状況のなかで生まれたスター、それが木村拓哉ではないか。それがこの本のそもそもの出発点だった。
「キムタク」と呼ばれ、主演ドラマが軒並み高視聴率を上げる。それはまさにスターならではである。だが同時に木村拓哉は、昨年までSMAPという国民的アイドルグループの一員でもあった。

つまり、スターでありアイドルでもある。アイドルが親しみを感じさせる近い存在であるとすれば、スターは憧れを抱かせる遠い存在。その意味では、両者のありかたは矛盾している。だが木村拓哉は、それを両立させてきた希有な人である。そこにはどんな秘密があるのか? 彼の出演したドラマ、映画、歌番組、バラエティなどをもう一度子細に見直すことを通じてその問いへの答えにたどり着こうとしたのが、この『木村拓哉という生き方』である。

そこには、先ほど述べたように時代とのかかわりがあるはずだ。木村拓哉が華々しく登場したのは、1990年代前半の日本。ちょうど昭和が終わり、平成の世が始まったタイミングでもあった。バブルが崩壊し、“一億総中流”の社会を支えてきた企業、学校、家庭といった場にさまざまな綻びが見え始めた時代である。

そんな1990年代以降の揺れ動く時代状況を背景に、木村拓哉は特別な輝きを帯びた。本書のなかでは、そうした「木村拓哉とその時代」についての考察にかなりの紙幅を費やしている。木村拓哉その人について私より詳しいファンは、きっとほかにいるだろう。だが、木村拓哉という存在を通じて見えてくる時代に焦点を当てた本は、これまでおそらくなかったのではあるまいか。その意味で、この本は特別アイドル好きではないという人にこそぜひ手に取ってもらいたい。そう私は思っている。

この記事の中でご紹介した本
木村拓哉という生き方/青弓社
木村拓哉という生き方
著 者:太田 省一
出版社:青弓社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年11月3日 新聞掲載(第3213号)
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