第27回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞 贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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受賞
2017年11月3日

第27回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞 贈呈式

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名誉と恍惚(松浦 寿輝)新潮社
名誉と恍惚
松浦 寿輝
新潮社
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十月十二日、東京渋谷の文化村で、第二十七回Bunkamuraドゥマゴ文学賞の受賞記念対談と贈呈式が行われた。同賞は一人の選者が受賞作を選ぶという他に類を見ない賞で、今年は川本三郎氏が選にあたった。受賞作は、松浦寿輝『名誉と恍惚』(新潮社)に決まった。同作は谷崎潤一郎賞も受賞している。 

川本氏は「今年はこれしかないと、早い段階で心に決めていました。谷崎賞も受賞されているのですが、新聞発表はこちらの方が早かった。けして真似したわけではないです(笑)。近年の純文学はスケールが小さいんですね。その中で今作は、一九三〇年代の上海、「魔都」と言われる都市を描き出すという、非常に構えの大きい小説で、それを描き切ってなおかつ感動を与えてくれた。都市は、文学のテーマとして非常に魅力のあるものです。古典にも都市を舞台にしたものが多く、ドストエフスキーにとってのペテルブルグであるとか、ジョイスのダブリンであるとか、必ず作品に都市というものが絡んできます。今回は松浦さんが、一九三〇年代の上海という舞台を選ばれた。このことで、作品がうまく回転していったと思います。この小説を読むと一九三〇年代が舞台なのに、現代社会の問題がたくさん入り込んでいる。組織と個人の問題であるとか、権力と闘争であるとか、あるいは戦争、それから難民です。現代の我々の目の前で起きているできごとが、きちんとこの中に流れている。それがこの小説が大きな感動を与える理由だと思います。それから、松浦さんは文章が格段にうまい。他の候補作と比べてみても、格が違う。これは松浦さんの詩人としての感性と、六〇歳を超えられた成熟が養ったものだと思います」
松浦氏(左から2人目)と川本氏(中央)を囲んで
 今回は、二十七回の歴史で初めて、パリからレ・ドゥ・マゴ会長のカトリーヌ・マティヴァ氏、事務局長のジャック・ヴェルノ氏が出席し、直接お祝いのメッセージを伝えた。

松浦氏の受賞挨拶では「ドゥマゴというパリのカフェは他のカフェに比べると、ちょっと高い(笑)。学生としてパリに暮らしていたときには、敷居が高かったですが、昨今ではパリに行くと必ずドゥマゴに寄るようにしています。私の好きな場所の一つです。今、世界は心も気持ちも滅入るような不寛容の時代で、あちこちで対立や葛藤や軋みが生じています。私の小説は、国と国とが激突する、一九三〇年代の、ファシズムの侵略の時代の物語なのですが、そうしたナショナリズムの狭い視野による、国と国との角逐というものが、現在なくなっているかというと全くそんなことはない。経済的なグローバリズムの状況は進展していながらも、アメリカファーストと言い出す大統領が出たり、フランスでもドイツでも、極右の政党が支持者を伸ばしたりしている。日本の政治もその流れと無縁でない状況が続いています。全然本来的にグローバル化していないわけですね。むしろ十九世紀型の国民国家の時代に逆戻りしているような危機感さえ覚えます。そういう中においてみると、『名誉と恍惚』では非常にアクチュアルな問題が語られているような、必ずしも意図したことではないのですが、書きながらいよいよそういう状況になってきたと思っています。そういう国家と国家、民族と民族の対立を越えるには、結局コミュニケーションの豊かさを取り戻すしかない。戦中期、戦前期の上海には、内山完造という日本人が開いた、内山書店という日本語の本屋があって、そこで中国の文化人や文学者が、現代の思想を掘り起こすということを行っていました。一方パリにも同時代に、シェークスピア&カンパニーという、アメリカ人のシルヴィア・ビーチという女性が開いた英語の本の書店がありました。ここにヘミングウェイやジョイス、エズラ・パウンドやフィッツジェラルドなどの文学者たちが集い、フランスの作家や詩人と交流していた。実質的な文化交流というのは、人と人の間に開かれるもの。東京あるいはパリに、ドゥマゴという空間が存在していること。日本とフランスでドゥマゴ賞という制度があって、身のある国際的に豊かな文化交流が行われていること、素晴らしいと思います。そういう場で顕彰いただけたことは本当にうれしく、名誉なことだと思っています」

この記事の中でご紹介した本
名誉と恍惚/新潮社
名誉と恍惚
著 者:松浦 寿輝
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年11月3日 新聞掲載(第3213号)
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