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八重山暮らし
2017年11月7日

八重山暮らし⑯

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西表島祖納の節祭に現れるフダチミ。(撮影=大森一也)
西表島の節祭


秘境、イリオモテヤマネコ、東洋のガラパゴス…。野生の極みによって塗り固められたイメージ。西表島に暮らし始めて、それは即座に打ち消された。島の伝統的祭祀、「シチ(節祭)」に出合ったゆえだ。

かつてはマラリアの有病地として恐れられていた西表。島は五百年以上に及ぶ稲作の歴史があり、豊かな農耕文化が受け継がれてきた。五穀豊穣への切なる願い、恵みに対する感謝を表す祭祀行事が、今も執り行われている。

なかでも祖納、干立集落の節祭は一年の節目、いわば正月に相当し、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。学校も休みとなる。公休日でもないのに…と、いたく驚いた。

祭りの日。秋空の下、人のざわめきが心地よい。振り返れば密林の山が差し迫る。砂浜を舞台に奉納芸能が繰り広げられる。満ち潮の時刻だ。純白の襦袢を着けた舟子たちが二艘のサバニ(木造舟)を猛然と漕ぐ。海を背景に漆黒の着物を纏うおんなたちの行列が続く。見知った友の研ぎ澄まされた眼差しは、声をかけるのもはばかられる。

ここ八重山も、都会も、人の暮らしに大差はない。それでも、島人を島人たらしめる祭祀が存在し、子どもたちは学校を休んでも参加する。ここには、ここのやり方がある…。

神の内懐で陶然と舞う島人は、時代におもねることのない美しさに満ちている。

2017年11月3日 新聞掲載(第3213号)
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