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漢字点心
2016年8月26日

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音読みでは「ク」と読み、「からだ」を指す漢字。「体」との違いは何かと問われると困ってしまうが、「巨軀」「長軀」「痩軀」「病軀」「老軀」などなど、成育や加齢とともに変化していく、生身の「からだ」を指すことが多いようだ。

そんなことを考えたのは、津村節子『さい果て』を読んだから。作中、この漢字が「からだ」と訓読みしてくり返し、用いられている。

作品は、小説を書くことに取りつかれた夫と、ありきたりの家庭を夢見る妻との物語。夫は、結核の治療のため、肋骨を五本も切り取る大手術を受けており、その傷痕が今でもくっきりと残っている。一方の妻も、生まれつき骨格が華奢で、妊娠八か月になっても、外見には変化が見られない。

そんな特殊な「からだ」の中に、二人はそれぞれの孤独を抱え込む。だから「軀」でなくてはならない、というわけでもあるまいが、この小説の底流には、生身の「からだ」へのある種の執着があるように思われる。
2016年8月26日 新聞掲載(第3154号)
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