日本の英語、英文学 / 外山 滋比古(研究社)◇外山節の強い説得力◇ いつまでも力強い声援を送り続けて欲しい|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
2017年11月11日

◇外山節の強い説得力◇ いつまでも力強い声援を送り続けて欲しい

日本の英語、英文学
著 者:外山 滋比古
出版社:研究社
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「英文科」という、いまや懐かしい響きさえ感じさせる、その世界の空気を思い出させてくれる。本書に付された帯には「著者渾身の書き下ろし」とあるが、この本での外山節は抑えが十分に利いている。その分、強い説得力を覚える箇所も少なくない。

英語の文章を読むとき、「最初の二、三行がわからなければ、あとはわからないと決めてしまうのは、日本人の思い違いである」と外山さんは言う。典型的な英文は、抽象的表現から始まって、その具体例が続き、そして、結びが来る。だから、抽象的表現の部分でてこずってもそこであきらめず、具体例まで読み進み、その後、抽象的表現の部分へ戻る。同じことが一冊の本を読む場合にも言える。さすが、名編集者として鳴らした外山さんだ。

外山さんはこうも言う。「だいたい、日本人は文化的にだらしない。母国語をしっかりと学ぼうという精神に欠けている」。とはいうものの、ことばにうるさい人もいる。そういう人はどこでことばについての感性を身につけたのか。「中学校で学ぶ“英文法”のおかげである」。我が意を得たり。

外国語力をつけることによって、「解釈力」がつく。さらに、「思考力」を高めることができると外山さんは言う。溜飲を下げる思いだ。「コミュニケーション」志向の、昨今の学校英語教育がこの機能を果たすことができるのか、はなはだ疑問である。

どうしてわたくしたちはことばの問題、ことに、英語の問題となるとこうまで能天気になってしまうのだろうか。ことばの教育のあり方を初心に戻って考え直す必要がある。

辞書の話も興味深い。いまや、電子辞書はおろか、スマートフォン搭載の辞書でことを済ます生徒や学生も少なくない。そのくせ、逆引き機能など、電子媒体ならではの機能を活用しているようでもない。かつて英文科御用達であった、Pocket Oxford Dictionaryの話を読み、久しぶりに書棚の奥から取り出してみたら、背表紙がとれてばらばらになってしまった。新本を注文しようとネットで検索すると、すっかり今風になったPODの姿があった。

話は人工知能(artificial intelligence)にも及ぶ。AIの世界はいま第三次ブームに沸いているがAIには「自然知能(natural intelligence)」、つまり、NIを大事にすることで向かい合うのがよいと外山さんは説く。解釈力、思考力を養う外国語学習は人間を発明、発見、創造へと誘う。

英文科が多く姿を消し、代わりに「グローバル・コミュニケーション学科」などのカタカナ学科が幅を利かす。外山さんは「いま、いくらか、軽く見られている、日本の英語、英文学を、一転、文化創造の源泉とすることができれば、新しい文化が生まれる」という。現状を嘆くだけでは変化は起きない。外山さんに英語・英文学世界の「新生」(「あとがきにかえて」のタイトルから)に向けた旗手をお願いしたいとは言わないが、いつまでも力強い声援を送り続けて欲しい。

この記事の中でご紹介した本
日本の英語、英文学/研究社
日本の英語、英文学
著 者:外山 滋比古
出版社:研究社
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年11月10日 新聞掲載(第3214号)
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