【横尾 忠則】夢の絵―こんな絵を描かれちゃ、俺は筆を折るしかないと心がガクンとうなだれてコビトになっちゃった。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
2017年11月14日

夢の絵―こんな絵を描かれちゃ、俺は筆を折るしかないと心がガクンとうなだれてコビトになっちゃった。

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2017.10.30
 仮設展覧会場で高階秀爾さんに会う。「おばあちゃんが来ていたんだよ」と僕が高階さんの御母堂に会わなかったことにがっかりされる。高階さんの背後の高い壁に展示されている4点の巨大な絵画作品は若手作家のモノトーンの具象と抽象の混合作品で、圧倒的な力で迫る。こんな絵を描かれちゃ、俺は筆を折るしかないと心がガクンとうなだれてコビトになっちゃった。

その並びに見慣れた自作が数点並んでいるが、すでに賞味期限切れ。コーナーを曲がった壁には自作と思われる海岸に横たわるヌードを描いた大きいドローイングが展示されているが、見覚えがない。リアルな夢だ。それにしてもあの巨大な絵画は僕の夢の中の作品だから、その作者は自分である? はずだ。何も恐れることはない。僕の無意識の中で描き上げた絵なんだから、それを顕在化させればいいのではないか。

帰宅前に瀬戸内さんから電話があって妻が出る。二言三言あって、「あんなわがままな人と60年もよく続いているわねえ、よっぽど奥さんエライのよ。ハンドバックでも買ってもらいなさい」「ハンドバックはいらないわ」「じゃ美味しいもの食べさせてもらいなさい」「太るからイヤですわ」。(中略)「横尾さん耳悪いというけれどその方が文章が上手になるのよ」「絵は?」「絵はもう上手だからいいじゃない」。こっちの方が夢みたいだ。

神戸から平林さんが「パリ土産!」と言ってウォーホルの立体絵本のプレゼント。

岩波文庫が乱歩の少年物を出している。岩波で読めば何かが変るのかなと思って『少年探偵団 超人ニコラ』を読む。血湧き肉躍ったのは今は昔。
2017.10.31
 実家の奥座敷を蜥蜴がスルスルと走るのを見たおでんはバシッと一撃加えると、蜥蜴はその衝撃で電流がショートしたような声を上げて人の背丈より高く舞い上っておでんと三ツ卍になって回転した。線香花火のパチパチというような悲鳴を上げながらいつまでも宙で渦を巻いていた。ショーを見るように僕はじっくり、観賞していた。夢らしい夢だ。

横浜の近くの住宅街に映画「家族はつらいよ」の舞台になる家がある。その家を〓田さんと写真を撮りに行く。その家の夫人は「美人女剣劇の座長みたいだね」と言うと、「いえいえ、この辺りの上流マダムですよ」と濵田さんにたしなめられる。

東宝に戻って、セットで待ち時間中の橋爪功さん、小林稔侍さん、風吹ジュンさんと雑談。
東宝スタジオセットにて小林稔侍さんと(撮影・濵田雄一郎)

2017.11.1
 フランスの人気歌手が実家に来て、歌を歌う。最後に「月の砂漠」をデュエットする。夢の中では難聴は治っている。場所変って銀座。洋書店で米コミック本を買おうとしたがパジャマのままに気づき、急いでブルゾンを羽織る。店内は高級ブティック。古い絵葉書をあさると中から僕宛ての一枚の葉書を発見。平均以下の夢。

8時に徳永がピックアップしてくれて玉川病院へ胸焼が気になるのでピロリ菌検査へ。結果は一週間後。朝食抜きの検査なので終ったあと院内レストランでホットケーキセット。

帰路、以前描いたY字路の家が取り壊されていたので、家の消えたその場所を写真に撮る。使用前と使用後の絵を描こう。

アトリエで谷崎潤一郎の「白昼鬼語」を読む。物語の結末は予測不能。著者は気でも狂ったかと思うが、狂ったのは主人公で、それ以上に狂わされたのは読者だった。

2017.11.2
 昼、東宝の食堂でカツカレー。セットでほぼ全出演者が休憩中の所にお邪魔虫。

夕方、蜂飼耳さん、高級和洋菓子を手土産にアトリエへ。神戸での次々回展「横尾忠則の冥土旅行」展のカタログの文をお願いしている。蜂飼さんは朝日新聞書評委員の仲間。

2017.11.3
 『平田篤胤―霊魂のゆくえ』(講談社学術文庫)を読む。篤胤の『仙境異聞 勝五郎再生記聞』(岩波文庫)以来すっかり篤胤に××××。(読解不明)

夜はルドルフ・シュタイナーの『ニーチェ みずからの時代と闘う者』(岩波文庫)。高橋巖氏の解説が理解度を高めてくれる。

躰の声に従った結果、腰の不調ほぼ改善。躰の声こそ我が主治医なり。

2017.11.4
 しばらくとどこおっている新作、女性のポートレイトシリーズの再開。描きながら構想が決まるから、いつもとっかかりが不安だ。

夜、貝原益軒『慎思録』読む。『養生訓』は躰の、『慎思録』は心の養生訓。

2017.11.5
 わが家に沢山の人が遊びに来ている。そこへ以前のアトリエの隣りの人が外国製品のセーターやトレーナーを沢山持ってきて「皆んなで分けるよーに」と行って帰っていった。それだけの夢。

軽井沢の足もみマッサージ師来訪。午後公園で場所を移動しながらコリン・ウィルソンの『シュタイナー』を再読。

今月号の「すばる」の保坂和志さんの小説「読書実録」を読んでいると、僕のことが二、三ケ所出て来た。

2017年11月10日 新聞掲載(第3214号)
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