鼎談=雨宮処凜×片山杜秀×大澤聡 90年代とはどんな時代だったのか 『1990年代論』(河出書房新社)刊行トークイベント採録|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 特集
2017年11月10日

鼎談=雨宮処凜×片山杜秀×大澤聡
90年代とはどんな時代だったのか
『1990年代論』(河出書房新社)刊行トークイベント採録

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第6回
常識と非常識の軸を立て直す

大澤 
 特定のジャンルが成熟するとはこういうことなんでしょう。島宇宙化し続ける。所与の条件下で最適解を出すのは得意だけど、不測の事態に対応したり横断したりするのは苦手。もっと上の世代はわざわざ「インターディシプリナリー」といわなくていい程度には学問の領域横断がなされていた。ポップカルチャーの世界でもそうですね。今は「インター」や「トランス」がうまく機能しない。そこをもう一度復活させたいという思いが『1990年代論』の構成には込められています。こういうチャンネルを増やしていくしかないんだと思います。
雨宮 
 今日は出てこなかったけど、一九九五年は戦後五十年ですよね。
大澤 
 本でもこだわったポイントなんですが、問題は当時の一般の人たちにそれがどれだけ意識されていたか。
雨宮 
 私はたぶんあまり意識していなかった。けれど、夏に戦争報道をたくさんやっていたことは覚えています。暇でお金もなくて友だちもいないから、家のテレビで浴びるように戦争報道を眺めていた。あそこで右翼に入る下地が作られたという気がします。
大澤 
 結果はどうあれ、戦争報道が機能したということでしょう。
雨宮 
 戦後五十年ではじめて戦争と出会ったのかもしれません。子どものころは教育の一環でしかなかった。
大澤 
 教育はもちろん必要なんだけど、えてして拒絶や反発を生んでしまいがちです。
片山 
 それから、九〇年代には日本国内で災害や事件がたくさんありましたね。九一年の雲仙・普賢岳の噴火や九五年の阪神・淡路大震災があった。地下鉄サリン事件もあった。それから、九〇年代終わりには東海村JCO臨界事故も。こんなことも起こりうるんだなと驚いていたら、ゼロ年代以降は、さらにエスカレートする現実を見せつけられた。
大澤 
 非日常がだんだん拡散して、非日常が日常と化してしまう。だから、異常にも気づきにくい。そこをぐっと戻して、何が日常で何が非日常なのか、何が常識で何が非常識なのかに関する軸を立て直す。そんな作業をそれぞれの現場で行わないといけない段階にあるでしょうね。
片山 
 『エヴァンゲリオン』でも攻撃されて大変なことが起きている最中のはずなのに、他方では学園生活を普通に送ってもいた。あれは大きな予兆なんじゃないでしょうか。二〇一七年現在の日常においても、北朝鮮のミサイルがいつ落ちてくるのかわからないのにこうやって私たちはイベントをやっている(笑)。平時の感覚と非常時の感覚がかなり曖昧になっていますね。
大澤 
 明確な線引きができず、モザイク状に入り組んでいる。瞬間的には「マジやばい」と強い危機感を覚えながらも、次の瞬間には「さっ、ドラマの続きを見よう」と切り替えられる。その意味では、もしかしたら僕たちは「虚構の時代」パラダイムのなかにまどろみ続けているのかもしれません。それもこれも事後の視点が歴史を判断するのでしょう。予言の自己成就にならないことを願いますが、二〇一〇年代は将来的に戦争の時代に区分される可能性だってある。
片山 
 昭和六年の満州事変のあとでさえ、日本は第二次世界大戦に巻き込まれないと、昭和一六年まで国民は思っていました。しかし、今では満州事変から昭和二〇年までずっと戦争だったという歴史観もある。後世から考えると、今の時代はそれに相当するのかもしれないですね。
大澤 
 けれど、最後にむりやり九〇年代っぽいことをいっておけば、その現実をポジティブに変えるためにこそ歴史にコミットする必要があるんだと思う。所与の条件として粛々と受け入れるわけではないということですね。 

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この記事の中でご紹介した本
1990年代論/河出書房新社
1990年代論
著 者:大澤 聡
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
エキタス 生活苦しいヤツ声あげろ/かもがわ出版
エキタス 生活苦しいヤツ声あげろ
著 者:今野 晴貴、雨宮 処凜
編 集:エキタス
出版社:かもがわ出版
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年11月10日 新聞掲載(第3214号)
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