「改組 新 第4回日展」開催 書家・井茂圭洞氏に聞く|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

  1. 読書人トップ
  2. 特集
  3. 「改組 新 第4回日展」開催 書家・井茂圭洞氏に聞く・・・
読書人紙面掲載 特集
2017年11月10日

「改組 新 第4回日展」開催 書家・井茂圭洞氏に聞く

このエントリーをはてなブックマークに追加
明治四十年に、日本画、西洋画、彫刻の三部門で文展としてスタートした公募団体「日展」は今年百十年を迎える。明治政府の美術振興政策として開催され、その後「帝展」「新文展」、「日展」と名称を替え、多様な変革を重ねながら明治、大正、昭和、平成と、脈脈と受け継がれてきた。歴史的な日展作家の名を挙げれば、竹内栖鳳、上村松園、福田平八郎、東山魁夷、杉山寧、高山辰雄、黒田清輝、藤島武二、棟方志功、高村光雲、平櫛田中、板谷波山、楠部彌弌、日比野五鳳、西川寧、青山杉雨等々、枚挙にいとまがない。

現在は日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の五部門にわたり、全国から一万点以上の作品が寄せられ、審査後、毎年秋に六本木の国立新美術館で約三千点の新作が紹介される。今年は、東京展の後、京都、大阪、大分、金沢を来年の六月まで巡回する予定である。

五部門のなかで、書は昭和二十三年に新設された。なかでも応募数が最も多く、今年は約八千点の応募であった。現在日展副理事長を務める井茂圭洞氏に、書家としてのこれまでの歩み、書に対する想いを伺った。
第1回
戦後、高校一年で深山龍洞先生との出会い

井茂 圭洞氏
新神戸から車で三十分ほど、閑静な住宅地の一画に井茂先生のご自宅がある。神戸で生まれ、小学校時代は戦争で姫路に疎開。医学へ進むか家業を継ぐかを考えていた矢先、きれいな字を書きたいと思って入った高校の書道部で生涯の師となる深山龍洞先生に出会う。それが全ての始まりだった。若き時代に培われた書への真摯な姿勢が、ひとすじの道となり、貫かれていった。
井茂氏は、昭和十一年、姉二人弟一人の長男として神戸で生まれた。戦時中は小学生であり、三年ほど姫路に疎開していたという。
「疎開中は艦載機による爆撃の心配がある中、畑の中を歩いて小学校へ行かなければなりませんでした。私は当時右足が結核性関節炎のため松葉杖をついていたのでそんなに早く歩くことができず、学校に行けなかったのです。病気は命には関わりませんでしたが、治療もよくできず、そうした自分の苦しい経験を少しでも他の人の役に立たせたいと思い、当時は医学の道を考えていました」。

医学部を目指そうと兵庫県立兵庫高校(神戸二中)に入学。しかし、進路指導の教師からは解剖ができて体の中がわからないと医者にはなれないと言われていた。解剖は苦手だったのだ。

一方、高校の書道部で出会った深山龍洞先生の指導する姿にたいへん感銘を受けた。先生は校長から専任を所望されても、学校の授業と書道部のほか、空いた時間は一般の人に書道を広めたいと企業を回ったり、その日常は忙しく、たいへん充実しているように思えた。「一生懸命教えていただけるし、教員室へ行くと熱心に書道の話をされる。当時は急速に西洋文化が取り入れられ文字もアルファべットに替えるという人までいた時期ですから、先生には次の時代に書道がなくなるのではないかという危機感があったと思います」。

しかし、一年の終わりに深山先生は突然高校を退職された。不思議に思っていたところ、その秋に先生は日展の特選を受賞されて納得したという。その後は先生の一番弟子である難波祥洞先生が専任で学校に来られ、三年まで習った。

その後も深山先生に時々お会いすることがあった。ある日、先生が切り出した。「私は伝統文化の書道を続けるために一生懸命やっている。できたら君もそういうことをやらないか」と。「私は不躾にも『書道で食べていけますか』とお尋ねしたところ『高校の先生にはなれる』とのお答えをいただきました。実家は神戸の果物の卸売業をしており、両親は後を継いでほしいと思っていました。私は医科に行きたいと言いながらも、半分は家業を継ぐことを考えていました」。

そうしたなか尾上紫舟先生が審査長の第二回日本学書展、また日本書藝院学生展でもかなの第一席を受賞。輝かしい成績を残した。しかし、自信がなかったという。先生の手本とご指導によって受賞しただけだと思った。まして書道で生きていくという自覚もなかった。

最終的には先生から「書道の仕事をしてください。書道は私が教えるから、免許状はしかるべき公の所でとっていらっしゃい」と背中を押された。「それで免許状をいただける京都学芸大学へ行きました。考えてみますと医科は自分に向いていない。先生のような充実した人生を送りたい。そして先生からいただいたお言葉。いろいろ重なって、書の道を選んだのです」。

2017年11月10日 新聞掲載(第3214号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
読書人紙面掲載 特集のその他の記事
読書人紙面掲載 特集をもっと見る >
芸術・娯楽 > 美術 > 現代美術関連記事
現代美術の関連記事をもっと見る >