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誰も見ていないから 第9回
2016年8月12日

誰もみていないから ⑨

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誰もみていないから ⑨
(油彩、キャンバス/53.0×33.3cm/2013年)ⒸShinjiIhara

「猫科の一番小さな動物、つまり猫は、最高傑作である。」レオナルド・ダ・ヴィンチはそう言った。 

猫を題材に描き始めたのは、一緒に住み始めてからであろうか、普段は人物画を描くことが多いため、試しに描いてみたら意外と描けた、というのが率直な感想だった。生活の中に自然と猫が存在するようになったから描けたのだろう。それ以降、毎年のように絵にしている。

家猫も描くが野良猫も描く。自宅からそう遠くないところに、猫がよく捨てられる島がある。半島に面した港のほとりに十数匹の猫たちが、釣り人や近隣の人たちに餌をもらいながら暮らしている。その捨てられた猫たちを見ていると否が応でも元の飼い主の姿を想像してしまう。身勝手な行為によって海に放たれた彼らを私は絵の中に描き、形は違うけれど、もう一度社会に戻したいと思った。暗い世界からでも光を放ち、力強く生きている彼らの姿を。

秋に開催される猫をテーマにした展覧会に向けて、そろそろ絵を描かなければならない。家猫を描くか野良猫を描くかまだ決まっていない。果たしてどんな猫が絵の中で生まれてくるのか、今から楽しみである。
(いはら・しんじ氏=画家)
2016年8月12日 新聞掲載(第3152号)
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