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2017年11月21日

料理研究家・谷島せい子さん(上)

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今年の十二月で七〇歳になるという谷島せい子さんは、団塊世代。高度成長期の真っただ中を走ってきた。料理という専門分野以外に、ライフスタイルそのものが注目され、チープシックなおしゃれ術など、ファッションリーダーとしても存在感を放ってきた。

どんなふうにして人生の扉をひとつひとつ開けてきたのか――。これから迎える七〇代にどんな青写真を描いているのか――。目黒のマンションでお話をお聞きした。

谷島せい子さん
私が二十六年前に創刊した主婦と生活社の『私のカントリー』という雑誌は、海外取材のページが多く、なかでも『赤毛のアン』が生まれたカナダには、スタッフが何度も足を運んでいた。

当時は、カナダの州政府観光局が主催するレセプションが多く、谷島せい子さんと初めてお会いしたのも、カナダ大使館だった。長身で細身のスーツをすっきりと着こなした姿が印象的だったのを、今でもよく覚えている。「なんておしゃれが上手な方なんだろう」と以来、何度も出会うことになるレセプションで、谷島さんのファッションをチェックしていた。

    *

谷島さんの幼少時代からの話を聞いていると、日本が高度成長に向かってまっしぐらに進んでいくさなか、アメリカやヨーロッパの影響を強く受けながら青春期を謳歌していた様子が伝わってくる。「私はアメリカがとにかく好きで好きで。“パパは何でも知っている”というテレビドラマを、食い入るように見ていました」

大学を出た後、谷島さんが選んだのは、海外をたくさん見て回れるスチュワーデス(客室乗務員)という職業だった。ここで語学の修練を積み、海外の航空会社を退社後は、通訳として新しい道を歩む。「当時スチュワーデスの募集は始まったばかりで、海外を飛び回るのが楽しくてしかたなかったけど、語学をもっと生かせる仕事がしたくて、職業替えをしました」

そして二十五歳で料亭を営むご主人と結婚。専業主婦の道をひたひたと歩き出し、子供の手が離れたときには、二十五年が経過していた。

「二十五歳までは、両親が私を守り育ててくれて、そのあとの二十五年は主人の庇護のもとにありました。二十五年間の間に様々な思いが積み重なっていて、子供たちが独立した後、五〇歳の時に家を出る決断をしたの」

谷島さんを含めた“団塊世代”と呼ばれる人たちは、それまでの日本人の思考や行動と違うことに、どんどんチャレンジしていった最初の世代だと思う。五〇歳で家を出るという行動も、次のステップを踏み出す一つの手段だったのかもしれない。

はじめての一人暮らしは南麻布から始まった。嫁いだ先が料亭だったこともあり、料理人やシェフを招いてのサロンのような食事会を、新しい住まいでも開くようになる。そして、ある編集者がこのサロンの存在を聞きつけて「雑誌に紹介したい」と声をかけたことが、谷島さんの料理研究家としての扉を開けることになる。「普通の家庭料理を教えてほしい」と言う声に背中を押されるようにして、料理教室も始まっていった。テレビ番組に出演したり、料理本を上梓したり、とにかく忙しい時期を過ごした。
秋を意識したインテリアコーディネート
 「最初に主婦と生活社から出版していただいた『新保存食レシピ180』という本がとても売れて。結婚するまで過ごした鎌倉の実家の床下には、みそや梅干しの壺がありました。この風景が私の料理の原点だと、あらためて思います」

今は「作り置きクッキング」や「常備菜」といった言葉のほうが主婦にはなじみがあるが、これらも広い意味でとらえれば、「保存食」と同義になる。谷島さんの料理本には、ジャムや果樹酒、干し野菜レシピなど、保存食関連のものがとても多い。また器やテーブルコーディネートなども含めた、食関連の仕事が次々と押し寄せていた。気が付けばもうあと少しで六〇代。ここで谷島さんは料理本とはテーマを変え、今までの生き方、考え方、暮らし方を、エッセイと写真で構成する本を出すことになる。

『女は60歳からが一番!いくつになっても退屈しない暮らし方』を六〇歳で、『60代、今が一番、シングルライフ』(共に講談社)を六十二歳で上梓したが、この二冊は、谷島せい子さんの新しいジャンルを切り開いていくターニングポイントになったと私は思っている。(次号につづく)
2017年11月17日 新聞掲載(第3215号)
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